向付三題

 

 外は梅雨の雨が風景を滲ませています。雨の日のままごとあそびのように向付に あれこれ盛り合わせて見ました。

 向付は気合の器です。お料理のプロの方には、向付は世界観を盛る、腕の見せ所なのでしょう。
 私にはそれはとても無理ですが、しかし、向付の上にトマトを一個のせれば、見慣れたトマトも、しみじみ見つめることが出来ます。「ああ、トマトってなんてすばらしい食べ物なんだろう。まるで真夏の太陽の一滴のようだ!」などと、トマトへの賛仰の気持がわいてきます。

 向付に粋なご馳走を盛るのも、もちろん素敵。でも、たとえ、トマトの一個、目刺の一匹でも、向付にのせると、それを肴に心豊かに飲めます。

器に凝るのもメタボの防止になるかもしれませんね!?

 写真左側の染付葡萄文様碗は、ふだんは御飯茶碗に使っていますが、碗向付もいけます。卵豆腐とジュンサイに冷たいお出汁を葉って、吸い口は針生姜。チュルチュルプニプニしたものはお碗形が食べやすいですものね。
 右側古九谷写し、向付の上には、プチ・トマト塩麹漬け。とまとは湯剥きをして、塩麹に20分くらいつけます。黒オリーブを添えたのは、単に見た目の面白さのためです。
 おくの蓮の花の向付は古染付に本歌があって、大勢の方がこのデザインで作っています。でも、曽宇窯の蓮の花は、柔らかな立体感と、薄作りなのに神経質にならないあたりなど、一味違うと自負しております。
 鰻と蛇腹に切った胡瓜の甘酢かけ。

 江戸切子の盃で、雨の山里の景色を肴に一杯。梅雨もまた、美しい。

 ふりむけば山の近づく緑雨かな  おるか

 

2012年7月2日