さくらもち

 さくらの開花の待ち遠しい時節となりました。裏山に山桜が二本あって、どちらの木が先に咲くかと、たのしみなこのごろです。
 梅の花の好きな蕪村には「二もとの梅に遅速を愛すかな」と云う句があります。桜は一気にパッと咲くイメージがありますが、身近に眺めていると多少の違いがあって、また愛しいものです。

 四月のお菓子といえば桜餅。一般に関西は道明寺、お江戸風は長命寺という印象ですが、さて、加賀は、というと、どっちもあるんです。近くのお店では一軒のお店で両方買えるので、道明寺も長命寺も好きなわたしとしては嬉しい限りです。

 手前の丸い小さなお茶碗は「桜子」という名前です。赤いシンプルな茶托はこのお碗のために山中塗りの佐竹康宏さんに作っていただいたもの。長命寺ののっている塗りの板皿も佐竹さんの作品です。奥様のお里の神社の古い壁板を惜しんでおつくりになったとか。
 お茶は加賀棒茶です。さっぱりして薫り高く、甘いものは勿論お料理にも良くあって、ふだんは、このお茶ばかり飲んでいます。

 赤絵の菓子鉢には道明寺桜餅。桜の葉の香りがたまりません。レリーフの唐草の淡い影にほのかに哀愁があるでしょう?

 青い桜のお茶碗と急須は「深山桜」という名前です。奥の茶入れは綺麗に焼きあがって気に入っています。しかし、絵の具に鉛がほんの少しですが、含まれているので売ることは出来ません。勿論、内側は白磁のままですので使用になんの問題はありません。花の待ち遠しいこの季節、テーブルの上にいつもだして使っています。

 手付き鉢にありあわせの玉子焼きや煮物など盛り付けて、ベランダでお花見昼食、手付き鉢って案外便利ですよ。庭の枝垂れ桜、早く咲かないかなぁ。

 

 夕桜家にて旅にあるごとく  おるか

2012年4月2日