散らし寿司

 

 雛祭りも過ぎたというのに、残雪のまだまだ深いこの山里。せめて器にでもと桃の御皿をだしました。お皿の銘は桃花源です。青海波文様に桃の花が散っています。酢蓮根を白波に見立てて散らし寿司の山は蓬莱島といたしましょう。なんだか食べ物で遊ぶなとお叱りを受けそうですね。

 寿司飯には浅蜊を炊き込んでみました。これも邪道かな。チューリップ文様の平鉢に、水菜のサラダ。
 漆のお櫃はこういうときに便利です。
 私は御飯を保温にしてとって置くのが、どうも好きになれなくて。
 冷や飯には冷や飯の味ってものがありますものね。先日、輪島の塩を戴いきました。そのお塩はミネラルバランスがとてもいいのだそうで、勿論お味もとてもいいんです。お櫃にとった御飯に、輪島の塩をぱらっとふって、あとでお茶漬けなんかにすると、もうおいしいのなんの。
 余談ですが、人の血管を流れている塩分の濃度は現在の海水より少し濃いめの、つまり太古の海の濃度だそうですね。太古の海って生き物が発生した頃かしら、それともカンブリア紀?ともかく私達も、そういう太古の海の一雫なんですね。

 時空を越えたはるかな南の海に蓬莱島はきっとあるのでしょう。

 

 みみらくの浜ありといふ浅蜊汁  おるか

みみらくは五島列島にある浜辺で、万葉週にも歌われている地名です。遣唐使船の寄港地でもあります。亡くなる方も多かったのでしょうね、みみらくの浜にいくと亡くなった人に会えるといわれています。今は万葉公園があるそうです。

2012年3月5日