はりはり鍋

 

 窓を開けると紅葉の音がしました。シシシ…というひそかな音です。柿と山紅葉が朝日に照り映えています。

 めっきり寒くなってきました。個展も終わったことだし、ちょっと一人鍋で一杯。元気な水菜があったので、はりはり鍋です。レシピを書くまでもない見てのとおりのお鍋。お出汁と酒にお醤油を少し足した薄あじの汁に水菜とお肉を入れるだけ。水菜の葉の細やかな線が軽くねじれるぐあいがすきなんです。きれいな野菜ですよね。京野菜の代表といわれますが、加賀にもあるんですよ。

 お鍋は余った粘土に耐火粘土などを適当に混ぜたもので火に掛けられます。取り皿には祥瑞小服茶碗。古木に小鳥の図柄が今の季節感かな、と思って使ってみました。酢橘のはいった豆四方皿は色絵の瓢箪が外側に四個見込みに二個で六瓢図。むびょう→無病 の縁起物です。 ヴィタミンC が風邪を祓ってくれそうでしょう?徳利から散った紅葉が箸置きの上に手つき鉢の上に。扇で受けたり。

林間に紅葉を焼いて酒を暖め

石上に緑苔を掃って詩を題す (白楽天)

 の気分です。古赤絵手江村秋色盃に新酒を酌めば今年の秋も行ってしまうのだなと感慨一入。

 料理の手間がかからないと器の趣向で遊べますね。

  肉購うて紅葉の闇を戻りけり  おるか

2009年11月2日