松茸御飯

 

 店頭に松茸の並ぶ季節になりました。最も松茸の世界も大相撲なみに国際化していて日本勢の振るわないこともまた同様です。もとめやすいカナダ産で松茸御飯してみてもどことなく香りが違うように思うのは、気のせいでしょうか。

 このあたりでは白松茸という巨大なキノコが取れたのですが、最近は、猪にたべられてしまうのか、とんとお目にかかれません。山道のいたるところ猪が丁寧に夜なべ仕事でほじくりかえした跡があります。猪は元気らしい。

 それでも落ち葉の上にかわいらしいキノコを発見するのは、たのしいものですね。土の中からどうやってこんな鮮やかな色を集めたんだろうと愕きます。加賀の海岸ではさまざまなキノコが採れ毎朝キノコ採りの人で賑わっています。キノコ採りは朝日の射すころがいいと聴いたことがあります。斜めに差し込む光にキノコが浮かび上がるんですって。

  毒紅茸アンリ・ルソーの日曜日  おるか

 毒紅茸は本当は毒キノコではありません。美味しくなくて食用にならない茸です。童話の世界のような紅色があまりにかわいいのできっとだれでもたべたくなってしまいそう。
 アンリ・ルソーの絵もただ素朴なだけではありません。奥には不思議な毒がある。それが美味しいのですよね。考えて見てください。もし河豚が全く安全な魚だったらあれほど珍重されるかどうか。毒を怖れるけれど惹かれずにはいられない。人間ってほんとに業の深い生き物ですね。キノコの魅力にもそれがあるかもしれませんね。

 写真の御飯茶碗は少し小ぶりの水玉模様。内側も模様が飛んでいるので向付にも使いやすいものです。奥の唐子遊び馬上盃にはあまりよく見えませんがシメジと菊の花の酢の物。おさけは福光屋さんの大吟醸です。フルーティな芳醇な香りがします。染付盃には「采山飲河所以養性」山に採り河に飲んで養生するといった蘇軾の詩の一節を書いています。ちょっとお盆が窮屈でしたね。

  2008年10月6日