オットセイ追悼歌仙 春隣の巻
発句 晩冬 春隣水を得たりしオットセイ 哲男
脇 晩冬 凍る淀みにあそぶうたかた おるか
第三 晩冬 音楽を朴の冬芽に零らしめて 朴花女
四句 雑 六本の弦すべて調ふ 燦
五句 秋月 御上着銀に月天心に 迷鳥子
折端 初秋 揺れてこぼるる白萩の道 山猫
初裏
折立 三秋 応へなき露の柴折戸押して入る 朴花女
二句 雑 目隠しされても指が覚える 何魚
三句 雑 幼なさにかけてくれたる首飾り 玲奈
四句 雑 あなたの誘ひいつも唐突 朴花女
五句 雑 かへり見ぬひとを思へば色が浜 燦
六句 春 常世の椿波が曳きゆく おるか
七句 囀に過ぎゆく時を懐かしみ 山猫
八句 春月 樞落とせば月も朧に
九句 春 石鹸玉爆ぜてみどりの朝生まる 何魚
十句 雑 抱くたび重るふわふわの猫 迷鳥子
11句 夏花 かろがろと浜風に乗る峰の余花 玲奈
12句 折端夏 鯉幟なら宇和島で買へ 燦
名表
折立 夏 産土に腹蔵のなく端居して おるか
二句 雑恋 指先からめ肩を寄せ合ふ 山猫
三句 雑恋 汝が母の形見の珊瑚呉れるなら 朴花女
四句 冬恋 埋み火のまま果ててしまはな 何魚
五句 冬 一年中忘年会の気分です 迷鳥子
六句 雑 父は黒田で子は安来節 玲奈
七句 雑 曽祖父は北前船の船頭で 燦
八句 雑 バタヴィア便り途絶えしがさて おるか
九句 雑 男装の王女は青きリボンつけ 山猫
10句 雑 鸚鵡の籠を楡の木に懸く 朴花女
11句 月 月満ちて神の召しますマドレーヌ 何魚
折端 秋 毒茸夢のやうに輝き 迷鳥子
名裏
折立 秋 長き夜をグレーテル待つ媼あり 玲奈
二句 雑 杖にすがれば(笑)繰り言 燦
三句 雑 音盤の傷は私がつけました 何魚
四句 雑 雨夜を鳥の鳴き鳴きわたる 朴花女
五句 花 暁暗の花舞ふ山をひとり行き 山猫
六句 蜃気楼とも蓬莱かとも おるか
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