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三 雑 （２９５）2003/11/14
雲間より立冬満月かお出して 山猫
きりたんぽ鍋の面子が一人欠け 玲奈
胸よぎる顔テラテラとただの人 洗濯機
山賤のどこまで髭を伸ばすらん 言爺
新しきトランクを買ふ暇もなし 迷鳥子
四 秋 （３１０）
米泥棒はトランクの中 オットセイ
ほふしつくつくほふしつくつく 九鼠
葡萄のできに尾鰭のついて おるか
あわて床屋は慰安旅行か 玲奈
萩こぼしつつ歌ふバリトン 迷鳥子
かの杖植えて梨を実らす とびお
色とりどりにコスモス揺れて 山猫
銀杏の眼がたしかにふたつ 洗濯機
五 秋月 （３２５）
怪人の影が舗石に後の月 おるか
聴き入れば月の描きしビブラート とびお
月宮殿から蓑虫が下りてくる 言爺
炉火欲しとおもふてをれば月が出る 九鼠
彼の国も月は照るのとおたずねか 洗濯機
月天心夢の中にも猫が棲み 山猫
芋を掘る園児の上に昼の月 玲奈
六 秋 （３４３）
二本足にて新走注ぐ とびお
遠く幽かに砧打つ音 九鼠
貼りし障子を青き影過ぐ 言爺
入選の絵の霧の手触り 洗濯機
わらい茸でもちょっとまぜよか おるか
牛乳瓶のひやひやとする 迷鳥子
トタンの屋根に柿落ちる音 オットセイ
さんま苦いがこたえられぬと 玲奈
うすきけむりの刈田を渡る 真里子
初裏 一 雑 （３６３）
輪になって踊る子供の影法師 玲奈
新聞はもう結構と折り畳む 迷鳥子
犯罪の舞台となりし牧師館 言爺
夕暮れになれば妖精目を覚ます 山猫
世の中を知らぬ博士の試験管 とびお
マデイソンの橋の袂でひきかへし 九鼠
ここに来て競りが動きし達磨像 洗濯機
笛吹いて道化師になりきれずゐて 真里子
裏ニ 雑 （３８４）
最終バスは夕日の中へ 玲奈
道を外れて古いモーテル 言爺
メールではなく長い手紙を 迷鳥子
まだぬくもりの残る指先 山猫
片道切符まだ有効か とびお
コイヘルペスにかかるともこい オットセイ
化粧を落とすビジネスホテル 洗濯機
ふはりふはりと一枚の羽 真理子
裏三 恋 （４０１）
不可思議に感謝しながらくちづける 迷鳥子
翡翠見つけましたもうすぐ帰ります 洗濯機
後朝の家路は雲を踏むやうで 九鼠
恋占の好き嫌い好き嫌い好き 言爺
血を流すフリーダ・カーロ二人とも おるか
逢はねども時あるかぎり君想ふ 山猫
たわわなる君の乳房に頬埋め 玲奈
戦場の兵士恋文したためて とびお
裏四 恋 （417）
林檎の頬にぬばたまの髪 玲奈
あやにかなしく想ふ吾妹子 言爺
星に託さむ熱きくちづけ 山猫
砂丘に埋むきみが面影 おるか
汝が面影を掻き抱き寝む 九鼠
「變しき君」とわざと書くひと 洗濯機
集会の輪にゑくぼ眩しく 真里子
君の好物ばかり並べる 迷鳥子
裏五 恋 （４３８）
依存症抜け出るためにもう会はぬ 迷鳥子
わかみよにふる心地してロストラブ 九鼠
一年に一度の逢ふ日待ち焦がれ 山猫
あの子の名書いては消して日は過ぎる 玲奈
ふとみればもういっぱいな涙壺 とびお
尼寺へ行けとは心変りでも 言爺
ネクタイを選んでくれたり締めたりも 洗濯機
なんだって？あの娘が僕を好きだって 落胡
握り締めそして忘れしその釦 おるか
裏六 雑 （４５６）
棕櫚縄寂びる建仁寺垣 九鼠
カメラに映る万引きの客 落胡
洋品店は客あればこそ 玲奈
名探偵にアポをとる午後 迷鳥子
再就職もままならぬ日々 言爺
いつもポッケに飴玉入れて 山猫
草木なびくおいでおいでと とびお
電子音にて話すロボツト 真里子
燃えないゴミにいざり機など おるか
裏七 夏月 （４７５）
参道の毒消売りの背なに月 とびお
旧藩主御下賜の切子月の酒 迷鳥子
清盛の閨のあつさも月濁る 洗濯機
縁台の将棋は序盤夏の月 玲奈
麦飯を女座りで食う書生月 落胡
跡継ぐといふ人形師月涼し 真理子
梅干して月は夜毎に太りゆく 言爺
蛍のつかのま休む月明かり 山猫
歌合せ無判の夏を過ぐしたり月 おるか
裏八 夏 （487）
土用鰻はうらめしさうに 落胡
箪笥の底にしまふ玉蟲 九鼠
「夏負けですね」と語らせもせず 洗濯機
ジャスミンの香のふくいくとあり 山猫
嫁御手ぶらの帰省恨めし 迷鳥子
回復期なるこゑ簾越し 真里子
裏九 雑 （５００）
些細なる不正ローカルニュース枠 迷鳥子
ねむる子の抱きし犀のぬいぐるみ 九鼠
筮竹で顎髭を梳く占い師 落胡
砂の上白い巨塔のそびえ立ち 山猫
顔面にテレビ電波の砂嵐 とびお
真贋のうるさき壺の打てば鳴り おるか
報道の自由それとも人権か 言爺
碁を打ちて時を忘るる老レスラー オットセイ
この店もいちげんさんはお断り 真里子
裏十 雑 （514）
楽の茶碗の銘「無一物」 九鼠
神の怒りに逃げまどふひと 落胡
ポケットの中のパチンコの玉 洗濯機
ゴジラを知らぬ子供と遊ぶ 玲奈
茫と墨絵の瀟湘八景 言爺
足音ばかり行き交ふ廊下 真里子
間伐材で作る鉛筆 迷鳥子
裏十一 花 （５３０）
天衣焼く煙の上がる花の波 おるか
チグリスの河畔に花の綻びて 九鼠
南蛮の桟留縞に飛花落花 言爺
ぬばたまの闇にやまぬは花の雪 とびお
花びらは空にめがけて落ちてゆき 玲奈
瞑りて初花の気を受けてゐる 真里子
花吹雪見せずともげに名裁き 迷鳥子
しばらくは花に逢ひけむ彰義隊 洗濯機
天上の雅なるかな花盛り 山猫
裏十二 春 （５４６）
滾る川瀬に挑む若鮎 九鼠
不遇をかこつトノサマガエル 落胡
静かなる刻かぎろひてをり 山猫
腕力を誇る競漕 言爺
黄砂の彼方イランアフガン おるか
十石舟はうらうらと過ぎ 真里子
名残 表一 春 （５６７）
生娘の顔の産毛に柳絮飛ぶ とびお
洋館の庭にぶらんこ揺るるのみ 迷鳥子
一息で無数に飛ばすシヤボン玉 九鼠
しじみ汁すすりつつ読む大事件 落胡
タンポポの種すきなだけあげるから 洗濯機
白い蝶黄色い蝶ももつれつつ 玲奈
永き日の薬屋ゾウのサトちゃんも おるか
蛇穴を出れば桑田すでになく 言爺
表二 雑 （５７９）
ケロリン飲んでおとなにしてる 玲奈
盗まれさうよカーネルおぢさん 迷鳥子
はないちもんめで貰はれてゆき 山猫
マサイの戦士乗せて走りし 九鼠
円周率を暗記してゐる 言爺
自治会長は酒屋のおやじ 洗濯機
がんもどきかも悩む豆腐屋 落胡
歌声喫茶の階段上り 真里子
表三 雑 （５９１）
島に住む母三線を掻き鳴らし 九鼠
いつまでもお元気ですねと皮肉られ 玲奈
あの星の猫の好物カフェオーレ 山猫
駅前に放置自転車繁殖し 言爺
バンザイでホームランになる凡フライ 落胡
かまど跡ダム湖の底にあらはれて おるか
本棚にローマ帝国衰亡史 迷鳥子
落語家の独演会へ列なして 真里子
表四 雑 （６０８）
国定忠治山を下りくる 九鼠
コロッセアムに猫が一匹 玲奈
ラインを越えて進むゲルマン 落胡
ウチの女房はエイリアンかも 洗濯機
アトムが早く生まれていたら 山猫
丘にのぼりて竪琴（リラ）を弾じる 言爺
たれそ敦盛謡ふたそがれ おるか
麿の鐙の浦に流れて オットセイ
塩を強めにニヨツキ茹で上ぐ 真里子
表五 冬 （627 ） 2003/12/31
獅子頭うれしはずかし皆金歯 オットセイ
寝不足の須磨の関守風邪心地 九鼠
寒の川ふんどし緩むやさ男 玲奈
枯葉では化けられませぬと泣く狸 山猫
年の瀬に質札掏られ得したような 落胡
霜柱埋蔵金の声がする 迷鳥子
偽者とバレて配所の隙間風 言爺
平目ちゃん寒かないかいそのなりで 洗濯機
タコ焼きに黛眉のおもわ雪催い おるか
雄叫びは古き褞袍のあたりから 真里子
表六 冬恋 （647） 2004/01/03
君がみ肌をゆずもて磨く 玲奈
寒紅さして帯ほどかれて 山猫
湯湯婆よりも君がもち肌 迷鳥子
単身赴任で雪払われて 洗濯機
鄙のむすめの息白き閨 落胡
表七 雑恋 （656）
背にもたれくの字くの字で添い寝する 落胡
面影のソドムの市に立つと聞き おるか
暁に帰るあなたに妬いてをり 山猫
御老僧即身仏になられけり 洗濯機
僕の名をタトゥーするってマジなのかい 言爺
表八 雑恋 （６６７〜）
メールあやつり恋の駆け引き 九鼠
殊更移すレール・デュ・タンを 迷鳥子
スイーツ食ぶ夢心地して とびお
デート現場をフォーカスされる 言爺
ラヂオ体操手に手をとって 落胡
隣になっても欠かさぬ昼寝 洗濯機
夜明けのコーヒー君しか知らぬ 玲奈
ウェッブ日記に書けぬその後 おるか
表九 雑 （６８８）
兜町歩道をすべる新聞紙 迷鳥子
この界隈ついぞ見かけぬ青い鳥 洗濯機
たくさんのでむぱ世界を覆ってる 玲奈
走るのは苦手なんですこの馬は 山猫
有毒な残滓かすかに発光す とびお
表十 雑 （704）
仔犬に服を着せて眺める とびお
転んだやつを踏みつけてゆく 玲奈
告別式に遠来の客 落胡
赤鉛筆の跡もかすれて 山猫
ふるさとのやま今宵恋しく 洗濯機
ぞろりぞろりとふらりふらりと おるか
置いてけ堀の声の妖しく 言爺
表十一 秋月 （715）
いづくにて見ても今日ある月さやか 玲奈
月が出てそして誰もゐなくなつた 九鼠
薄墨の山なみ低く月まろく 迷鳥子
雲切れて鳥辺野に月照りわたり 言爺
虫すだくボルネオ島の月のこと 洗濯機
白木槿ひらけば月の欠け始む 山猫
月光の昔話の街に差す とびお
日本の裏にて月を置き去りに おるか
表十二 秋 （732）
絲瓜の水が瓶にあふれて 九鼠
ヴィオロンは鳴りキリギリス鳴く 落胡
邯鄲の声なほ透きとほり 山猫
神ゐますごと銀杏散り敷く 洗濯機
指とほつぺた熟柿に汚す 迷鳥子
聖なる母の青い輝き オットセイ
座敷童も燈火親しむ 言爺
古きフィルムに揺るる秋草 とびお
名残 裏一 秋 （751）
背表紙の枯れ葉色してつまの日記 洗濯機
スーパーで買ふ故郷のきりたんぽ 九鼠
木の実降る小動物の音しきり とびお
覗きゐる拡大鏡に虫の貌 真里子
柿食へばあちらこちらに鈴の鳴る 山猫
ユトリロの白に耽りて濁り酒 おるか
裏二 秋または雑 （763）
雑 吟遊詩人分け入りし森 真里子
雑 鄙にまれなる女がせきする 玲奈
雑 最後のピースこれで禁煙 言爺
雑 とらへられたるくのいちのこえ 洗濯機
秋 鳩のまなこに紅葉ひらひら 山猫
雑 村は買いたいボンネットバス 迷鳥子
秋 音も立てずに揺るる蓑虫 九鼠
裏三 雑 （772）
よそながら気になる一億分の金 玲奈
トンネルを抜けてトトロに会いに行く 九鼠
いつだって噂話につく尾鰭 山猫
横綱かノーベル賞かといわれても 洗濯機
高砂も知らぬ翁と媼にて おるか
改札の鋏をちよんと入るるとき 真里子
裏四 春 （783）
土筆摘みつつ草と戯れ 山猫
獺の祭の頃の発心 九鼠
雛市へ行きあれかこれかと 言爺
雪解けの息耳の間近に 洗濯機
下駄の並びし暖き縁側 落胡
春の兆しを和菓子の銘に 真里子
滝の焼き餅佐保姫さんへ 迷鳥子
裏五 花 （795）
いま窯を出でし青磁に花吹雪 九鼠
やうやうに花咲きそろひ筆を執る 落胡
初花を待ちて茶会の緋毛氈 山猫
花の色白湯の中に映りおり 玲奈
花見酒焼き鳥卵ハンバーグ 洗濯機
花便りその封筒のさくら色 言爺
新しき時代（ときよ）の匂ひ花ひとひら 迷鳥子
能管に喉というもの花吹雪 おるか
挙句 春 （804）2004/02/02
蜜蜂の声聞くが嬉しさ 迷鳥子
鯖街道は陽炎の中 言爺
とほく近くに野遊の列 真里子
鳥は囀る生きる喜び 山猫
手を振る人に風も光るよ とびお
御入学父母祖父母全員 洗濯機
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