「冬花火の巻」

発句 冬   冬花火沙漠の旧都かなしむや  褄黄
脇 冬      ときのはたてにひらく水仙  おるか
第三 雑   新鋳の釜のいっとき静まりて  洗濯機
四 秋      あら、蜩が鳴いていますね  泥鰌
五 秋 月   全くて持つて帰るに重過ぎる月  迷鳥子
折端 秋      レム睡眠に浮かぶ白桃  とびお
初折 秋   他生から口笛ひびき霧まとう  褄黄
八 雑      象舎の鍵の少し斜めに  とびお
九 恋    半年の香港勤務命ぜられ  迷鳥子
十 恋      絹糸で巻くゆびきりの指  小雪
十一 雑恋   摘まみあう刹那のせめぎ裏がえし  褄黄
十二 雑      無明つらぬく青ダイオード  洗濯機
十三     団扇にも月が見えたり東山  褄黄
十四       田夫の腹で鱧が泣きをり  洗濯機
十五     めぐるなか黙るしかないぬいぐるみ  褄黄
十六       貨物船から降りる異国に  とびお
十七     羽織袴花は尖まで漲らふ  迷鳥子
折端       女人禁制の嶽ののどけさ  洗濯機
十九     雲雀から笑はれてゐる勘違ひ  迷鳥子
二十       おかしあやしい仮装行列  褄黄
二十一     長崎に限ると寄こすカステイラ  迷鳥子
二十二 新年    紅茶の湯気の外は御降り  とびお
二十三 新年   福引きを独りで作りはずれ籤  褄黄
二十四 雑恋     あはず過ぎゆく恋の宵闇  絵馬
二十五 雑恋   たくらみて悲しい劇に誘ひけり  洗濯機
二十六         耳の真珠をたしかめる癖  小雪
二十七 雑    一休の霊力ひそむ砂の庭  褄黄
二十八 雑       ポッタリアンは語り始める  迷鳥子
二十九 秋月   半面はたれにも見せで月しずか  洗濯機
三十          露の入江に寄する菱の実  とびお
三十一     渡り鳥面相筆を買ひたしぬ  洗濯機
三十二       「すっぽんエキス」の辻を曲がって  とびお
三十三     隠れ鬼してゐる暇に古来稀れ  迷鳥子
三十四       缶からりんと空もおぼろに  褄黄
三十五     ゆふがたの花にいちいち爪立てば  迷鳥子
挙句         嘆きの壁にとまるてふてふ  おるか

捌き おるか   (水族館ログ 1898〜2778