獅子沓冠 「新涼、秋草尽くし」   おるか

新   涼や徳利にあをき馬逃げ       る
       はや山の端にくずる月        げ  (くず)
り   式の名で四股を踏む草相撲           (なでしこ)
       視線の刃をみなへし折り       に  (をみなへし)
や   や暗き地窖にワイン眠らせて          (きちかう)
        口をすすぎて帰る人         ま  (すすき)
う   姫がまつかな夏の薔薇を乞ふ          (かまつか)
        筒鳥うたむ射てまゐらせ       う  (りうたむ)
や   がてそむくけはいも見えぬ夕まぐれ      (むくけ)
       すれんだあさが仄かにゆら      き  (あさがほ)
と   ひもまた答へも微塵冬の波            (もみじ) 
        これきり人は二河白道        を  (きりひとは)
く   塚の物憂きふしはかまはねど          (ふしばかま)
        ポトと水ひき歩むは井        あ  (みずひきみ)
り   乱と彼の世も花の散りぬらん           (らん) 
       この盃は昨日の蝶           に  (はき)

 

秋風や心は千々に破れ鏡  洗濯機

に   げる馬あをき徳利に涼や        新
げ   水は力ずくでは汲めず            (ずく)
       引越して長き年月十薬         ゃ (こしてな)
る   人の岸へ波音高く                 (しへなみを)
       海底に行こうか地峡は春模      う (うかちき)
う   かうかとキスする成り行きで             (きすす)
       姑か妻かとせまる顔の         や (かつまか)
ま   白き衣も汚れむ道理                 (むたうり)
       もう夕餉組む結跏趺坐得ぬ悟     り (けくむ)
あ   き鼻緒がサーチライトに              (おがさあ)
       聞こえるは当時未聞のロッシー    に (じみも)
を   長鶏は飛び離宮朽ちゆく             (はとひりき)
       豊漁の声海女交はし船溜ま       り (まかはしふ)
き   安く焚き火住み慣れし町              (きひずみ)
       絢爛と御城の花に狂ひ泣         く (んら)
と   磐津節の渋き幕切れ                 (きは)

 

 

2001年 秋   水族館のログ、1206、1229 を参照