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「迷森戀（もりにまよふこひ）」
早歌
げに戀は曲者 曲者かな あくがれ出でし長月の ぽわぞんの香の道しるべ 迷ひ入りたる森の奥 柞の紅葉楢紅葉 はや散りそめし下影に いであひたるは あるてみす 額にけぶる三日月の 唇あかくうち笑みつ 手に玩ぶ弓弦（ゆんづる）に 矢先つがへて 引きしぼり ひやうと放てばあやまたず わが心の臓射てんげり
毒の痺れはさざなみと 総身にまはりゆきわたり 額に生ひたる両の角 胸は激湍（たぎつせ）鳴りやまず なんすれぞ戀よ この群肝の心響す（とよもす）仕打ちぞや
詰らんと追はんとすれど さ牡鹿の 口に言の葉乗せあへず わが猟犬の我を追ひ い行き彷徨ひ膝折りて 月隠したる戀の闇 われのみ独り倒れ付す げに戀は曲者 曲者なり 曲者なりけり
おるか 2002/09/18
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