半歌仙 「枇杷若葉」の巻

初表 発句 春   枇杷若葉ひらきそめたる加賀の春  雅彦
脇  春       風うららかにめぐり来たりて  おるか
   春     ほろほろと薇干され人もなし  燦
   雑       わがてのひらに星は降れるを  雅彦
月 夏     あかときの夢に木となる夏の月  おるか
   雑       ペルシャの青の音楽流れ  燦
初裏 冬     色うすき時雨のあとを歩みつつ  雅彦
   冬       耳打ちされる凍死の噂  おるか
   雑     湖の底ひに朝の雷鳴りて  雅彦
   春       猫のいびきに暮れる春の日  おるか
   花     ゆくりなく桜は夢に吹雪きけり  雅彦
月 春       言葉を惜しみ仰ぐ春月  無名氏
雑 恋     逢引に深煎りを知る午後の庭  おるか
   恋       影をあはせて道を下りき  雅彦
   恋     背表紙のサインに指を沿わせつつ  おるか
   秋       紅葉のまへにひとり寂しく  雅彦
秋 花     花野にて女ばかりの酒の客  おるか
挙句 秋       酔ひて帰ればかりがね高し  雅彦


西王燦  橋本薫(おるか) 大谷雅彦   

捌き:西王燦  1998年4月18日