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藪椿  染付三つ筋文花入れ

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 北陸はまた雪になりました。雪の中で、藪椿の紅色が一入鮮やかです。雪で餌がないのでしょう、目白が椿の蜜を吸いにきます。花粉まみれの姿は、まったくきなこをまぶした空飛ぶウグイス餅。
 椿のつややかな照葉と花の色のくっきりした対比、枝ぶりもよく、花の少ない時期にありがたい花材です。鄙びた土壁にも、モダンな部屋にも良く似合ってくれます。椿の品種もたくさんありますが、山に自生している藪椿に惹かれます。私は毅然としたたたずまいが椿と思っているので、そんな風に活けますが、花だけを水盤に大盛りというのも妖しくていいかもしれません。その時は、豪華な八重や絞りの銘花がほしいでしょうね。

 花は呆気なく落ちてしまうけれど、椿の命は長く、八百比丘尼のとりものなのもうなずけます。八百比丘尼の故里の若狭には椿が多い。大昔、照葉樹林帯を移動して日本列島にたどりついた先祖の記憶なのでしょうか。椿の原生林の中に入ると、不思議に静かな時間が流れている気がします。若さの浜辺には海流の関係なのか、いまでも大陸からの漂着物が打ち上げられます。若狭郷土資料館に展示された、片方の手首だけが失われた華麗な漂着仏はわすれられません。

   海上に道あり椿落ちやまず   おるか

2005年3月14日

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