目次に 戻る

春の山野草

 桜も散って、今年の春も逝きますね。この時節、白い花が咲き出します。家の周りの草花を活けて見ました。左側の小さな花立てにはゼンマイと胡桃の芽、白玉椿、中央、鶴首に嫌われ者のマムシ草、右手前は白山吹、右奥はホウチャクソウ、花器は越前焼、日向光さんの作品、とても手取りが軽く、繊細な轆轤。手前の小さな苔盆栽はイブキジャコウソウです。

辛崎の松は花より朧にて   芭蕉

 山の木々が一雨ごとに芽を伸ばして、刻々と色を変えてゆきます。赤みがかったり紫が浮かんだり、色というより輝きのよう。当におぼろ、はんなりはんなり。一つとして同じものの無い圧倒的な緑の諧調。音楽が聞こえてくるようです。地の底に響く重い鐘の音。それが鳴らされる度に木々はその定められた緑へといそいでゆきます。白い花々を散りばめて。

はるばると水は落ちゆく山毛欅若葉     おるか

 白い花には朴の花や大山蓮華など香り高いものと、白山吹や沙羅の花のような香りのまったくないものとありますね。なぜだか不思議です。

2004・4・19

目次に 戻る

t-009