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鰤起こし

 北陸の冬の雷の物凄さは会った人でないとわからないでしょう。天が壊れて落ちてきたかのよう。そして、その後、雪になるので、雪雷、雪起こしともいいます。

窖へ下りる裸火雪起こし  橋關ホ、第一句集「雪」

 金沢に生れた關ホ氏は生涯雪を懐かしみ、この句集のあとがきに「雪の中から生れて、雪の中で大きくなった私は、故郷を遠く離れてゐると、殊に雪が恋しくてならない。」と書かれています。北国の雪は生活に何かと不便ももたらします。「白い、いやなもの」などと口ではいいますが、近年のように降らなければ。なんだか物足りません。心のどこかが雪に親しんでいるのでしょう。寒がりの私でも、新雪の林の中の道は、新しい足跡をつけてどこまでも歩いてゆきたくなります。

 この時節、寒鰤が美味しくなります。半分趣味で漁をしていた絵付け師のおじさんが「海底にいた鰤が、この雷で驚いて上がってきて網にかかるんだよ」と見ていたように話てくれました。まさに鰤起こし。(おるか)

黒曜の鏃煌々鰤起こし  おるか

 

2003/12/22

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