葉形の器 2 染付葉形三足豆皿

 新緑の季節となりました。木々それぞれの若葉の色や形は本当に驚くほど多様で、緑の諧調の豊かさには圧倒されます。心地よく襞を刻んだ柿若葉 葉先に朱を潜めた若楓、落葉松の新芽もきれいですね。富安風生はその美しさをこう句にしています。

   落葉松の芽は花よりもほのぼのと   風生

「花よりも」とは最大級の賛辞でしょうね。芭蕉にも「辛崎の松は花より朧にて」があって、私はしょっちゅう混同してしまうんですが、両方の句とも緑の美しさを心から愛でています。葉の美しさはいわば用の美に通じるような通人好みかもしれません(花だって植物にとっては大事な用のためでしょうけれど)。ともあれ、草木の葉は昔から、器にも使われてきました。万葉集にも…

   家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る

などと詠われています。ものをを乗せたりつつんだり、気軽に毟っては打ち捨ててしまう葉っぱ。それでも葉はそのほのかな香を食べ物に移してくれます。緑は優しいですね。食卓に野趣があるのはいいものです。そんなことを考えながら使いやすい染付で葉の形を作ってみました。

 ついでですが柏餅のカシワはもともと蒸したり包んだりするのにいい炊葉 からきているそうです。それで朴の葉もホホガシワなどといったりするのですね。

   納屋壊す音続きけり木の芽雨   おるか

2006年5月1日


葉形の器 1  垣通しと垣通し葉形豆皿

垣通し仕事の後のお茶の味   おるか

 木の葉、草の葉、を見ていると、おもわず器に写したくなります。しかも、ほとんどそのままのデザインでいけるもの本当に多いです。この垣通しもまさにそんな形です。どちらかいうと嫌われ者の雑草ですけれど、よく見ると花も葉っぱもなかなかに可愛い。先週見ていただいたのは、垣通しの他に、溝蕎麦、桐の葉、柿の葉、ちしゃな(キャベツやレタスの類)です。こんな豆皿をお茶の時間に並べてみるのも楽しいです。シナモン・スティック、角砂糖、苺を乗せてみました。(オットセイ)

  

2006年5月8日

essay-015