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手仕事つれづれ  「蹴り轆轤(ろくろ)」

 写真は僕のいつも使う轆轤、蹴り轆轤です。下に少し見えているところを蹴って廻します。大きさは、天板が直径38p厚さ11pで、下はそれよりやや直径が大きい。共に欅(けやき)の一枚物です。重いですよ。しかし動きは軽いです。ちょっと触ればスーッと回ります。その意味では「蹴り」というのはよくない表現かもしれません。蹴るというより、そっと足のつま先で廻したり止めたり回転を調節する感じです。天板はいつも粘土がうっすら白くついていますが、下は毎日足で撫でられてツヤツヤのぴかぴかです。

 さて、現在はほとんどの轆轤師が電動轆轤を使う中、何故うちでは蹴り轆轤を使うかというと、使い心地がいいからです。そうならば、何故、もっと多く轆轤師が使わないかというと、大変そうに見えるからではないでしょうか。そのてん、師匠の須田菁華工房で蹴り轆轤に慣れたおかげだと思います。

 決して、電動轆轤に比べて重労働でもないし仕事能率が悪くもありません。自分の足による細やかな動きが心地いいですし、細工物には特に便利です。文字通り手足となってくれます。また、音もしませんしから、周りの空気と一体になって仕事をする気分にさせてくれるのも嬉しいです。そういう気分は、必ず出来上がる品物によい影響、どことなくゆったりした作行きとして現れると信じたいです。轆轤を廻す雰囲気は「急須を作る」を御覧下さい。(オットセイ)

   水澄むや轆轤に壷の口生れて   おるか

2005年8月22日

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