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手仕事つれづれ  「酒器を作る」

 新しくぐい飲みをいくつか造ってみました。新緑の映りこむ縁側で、五月の長い夕暮を肴に飲むのもいいものです。そういえばお酒の神様、少彦名命の祀られている大神神社から山の辺の道を歩いたのも、ちょうど今頃でした。良いお酒には良い水が欠かせないように、三輪山から流れ出る水が道沿いにあふれていたっけ。御神水の湧く狭井神社も緑の中に鎮まっていました。

 記紀の歌謡に酒の歌はいろいろありますね。

   この御酒(ミキ)を醸(か)みけむ人
   その鼓 臼に立てて
   歌ひつつ醸みけれかも
   舞ひつつ醸みけれかも
   この御酒のこの御酒の
   あやに転(うた)楽し ささ   武内宿禰

 この時代は醸み酒なんですね。おいしいのかなぁ。虫歯の無い時代だったんだろうなー。清酒のはじめは戦国時代ごろ、片白の御酒だったそうですね。江戸時代にいまのような諸白の御酒になったよし。各地に美味しい地酒があって、それぞれに郷土色豊かな肴もある。ありがたいなー。大神神社の方角に拍手でもうちましょう。昨日は金沢名物泥鰌の蒲焼をいただきました。西脇順三郎も涙しそうな、この地上の命のほろ苦さと香ばしさの儚くさびしい美味でした。 

   歯にあたる泥鰌の骨や新樹光   おるか

2005年5月9日

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