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栃餅

 熊川は山間の小さな町です。街並みに鯖街道の宿場町の面影を残しています。名物の熊川葛を売るお店、杉玉の下がった地酒屋、等々の並ぶ道の用水は、思いがけないほどの水量で清冽な水が奔っているのが印象的でした。

 若狭と京都を結ぶ鯖街道の賑わいは家々の造りに偲ばれます。雪深い土地らしい太い柱や梁、ひさしの深さ、褪せた紅殻格子、みな水音の中に佇んでいます。そんな通りの野菜や椎茸を売る店でおいしそうな栃餅を買いました。

 道のはずれに神社があって、義民を祀るとのことでした。静かな村落にも、それぞれの重い歴史が秘められているのでしょう。山々の薄紅葉を一時明るく照らして、秋の日は傾いて行きました。 栃の実の香りはヘイゼルナッツと同種なのでよく似ています。香ばしく、素朴な味わいは、飽きが来ません。(おるか)

栃餅や義民の社見すぐして   おるか

後に見える木の実は栃ではなく団栗です。(オットセイ)

2003・11・3

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