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人参

 人参は江戸時代頃中国から日本にやって来たらしい。朝鮮人参に似ていたから人参とよばれるようになったとか。

 それにしても、どこが人似にてるのか。たまに白い手足のうっふん大根を見かけますが、そういえば人参も昔は二股などがありました。紅顔の人参童子がありました。今は規格品ばかりでつまりません。せんだって伊吹山の麓で買った地物の人参はとてもいい香りがしました。日本の各地に細々と残っているその土地土地の固有の品種を大切にしていきたいものです。

 人参の赤い色は食卓のなによりの彩りです。縄文中期の、赤い色の用いられた墳墓や埋葬品をみたことがあります。赤は神聖な色だったのでしょう。奈良時代の禁色は深紫と深紅。正倉院の古代裂には欝金で下染して紅に染めたものがありますがまさに人参色。人参よ人参よ寒い季節の妖邪を祓って血色を良くしておくれ。(おるか)

笊の中人参童子にほひけり    おるか


 人参は大好きな野菜、芹科独特の香りがいい。ところが最近の人参には、肝心のその香りがほとんどなく、水っぽく、とても甘い。なんかつまらない味になってしまった気がします。写真のものは、泥付きで小ぶり、良い歯ごたえと香りがありました。

 最近の店頭で売られる人参は、表面を洗うだけではなく、研磨してあります。薄皮が取れて、妙にのっぺりしています。それもいただけない。常備采としたいのに、早く痛みます。しばらくすると、表面が妙にぬるぬるしてきます。見た目を珍重するほうも悪いのですけれどね。(オットセイ)

2003・11・24

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