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なめこ 椀と盆(佐竹康宏作)

 茸はどこか淋しいものです。鮮やかな色、かわいい形、そしてまったく無力ではかなくて。

 スーパーでも買えるとはいえ、自分で採集できる、今では珍しい食材ですね。古代人も江戸人も連綿と食べて来たに違いない、秋の味覚。ひかえめな美味です。茸を食べるとなぜか昔のことをおもいだします。

 それでも茸の体にいいことは昔の人も良く知っていると見えて説話などにでてきますね。狂言の「くさびら」も茸の不思議な繁殖力を思わせて愉快です。

 毒キノコは怖いけど茸の中では少数派です。大概の茸は毒でもなければ美味でも無く、弱そうにみえてしたたかで、無為なようで、ちゃんと森林の生態系をささえている、じつに老荘的な悟りを生きてる存在のようです。

 今回は漆塗りの器二点。山中町での作家、佐竹さんの作品です。大振りなお盆は、このページでもしょっちゅう使っていますね。写真左下にちょっとみえてるのは木の葉箸置きです。朱塗りのお椀に映っています。(おるか)

  岩棚やみなうなだれて滑子汁      おるか

2004年9月27日

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