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加賀梨  染付チェック文六寸皿

 秋の果物がでまわりはじめました。写真は加賀梨「豊水」という品種です。大きくて色白で、おっとり育った風情です。色が濃くて小ぶりな「幸水」、新種(?)の「新水」「愛甘水」などいろいろな品種があります。「二十世紀」は、あまりみかけなくなってちょっと寂しい。「長十郎」なんて、「昔あったよねー!」という感じ。 

 今年は台風が多く、農家はきっと大変だったことでしょう。庭にさくらんぼと桃を植えてみて、果樹農業の難しさをしりました。鳥と虫に先に食べられて、ほとんど私の口には入りませんでしたもの。樹上で完熟した果物は断然おいしい。鳥達もしっかり選びますね。

 果物が大好きなので農協のフルーツランドに自分の木を買おうかなとおもいましたが、おもいとどまりました。さすがに食べきれないでしょうから。自分の木があったら、毎日眺めに行きたくなるでしょうね。

 梨の花も綺麗です。桜に似て大きな花びらにデリケートな色調の彩があって、しかも甘すぎない。山桜のように花の周りを飾る葉の色も黄緑から臙脂を刷いた茶色まで、微妙な諧調があでやかです。楊貴妃の泣き顔を「梨花一枝春雨を帯びたり」とは白楽天の筆ですが、「なよなよばかりでもない、凛としたところもあって複雑なのね」と思います。春の梨園は言うまでもありませんが、夏の夜、一面に誘蛾灯が点された景色も幻想的です。

 十月の農協祭りで、よく加賀梨ジャムを買います。甘くて、梨独特のじゃみじゃみした口ざわりがちょっとめずらしい。それでも、剥きたての水もしたたる姿がやっぱりいいなー。

   梨赤く風景水を流したり     おるか

2004年9月6日

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