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あけび

 野山も色づき始めました。収穫の季節、お隣りのおじいちゃんから通草の実をいただきました。葡萄色(えびいろ)のアケビの花もきれいですが、莢も始めは美しい薄紫色です。じゅくして割れる頃には錆色がかってきます。

 真白い実は濃艶にねっとりして上顎に甘さがまとわりつきます。野生の通草の実は種が、ここまでやるかというほど多くて硬くて、ねとねとのなかで種を出そうとすると口の中がおおわらわです。

 大きな葉形の染付けの皿に盛って庭の木洩れ日の中に出してみました。大皿はなんでも豪快に盛り付けて映えますが、こんな木の葉のお皿なら、木の実が一個おいてあるのも絵になります。

 アケビの蔓は丈夫でしなやかなので、籠など編むと素敵です。通草という字は素人の考えですが、民間薬で利尿剤に使われていたせいでしょうか。昔から山里の人の暮らしの、身近にあった植物なのですね。

 秋の日は明るいけれど、肌の上に落ちても、もう暑くない。茸をとったり木の実をとったり、冬の準備の前のひとときの楽しみです。

明日伐る一樹に通草あまた垂れ     おるか

2003・10・13

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