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五郎島金時(さつまいも)

 加賀野菜の一つにこの五郎島金時があります。ほくほくして甘味が濃いサツマイモです。焼き芋が一番ですが今回はバターで炒めて白蜜にシナモンの香りを添えてみました。サツマイモとシナモンの組み合わせわたしはすきなんです。  

 器は少しあばれた雰囲気の芙蓉手です。景徳鎮より南方の窯で焼かれたものの風情を写して。呉須の藍色もやや強め。荒さをのこしたところがみそです。南米原産のサツマイモが琉球弧を経て十七世紀に九州に伝わった。そんな南方渡りのイメージの遊びです。

 海上の道といえば折口信夫が海の向こうに「はは」の国、他界を見たのが思われます。海の彼方から訪れるマレビトや祖先神の物語は遥かな時を越えて何か訴えかけてくるものがありますね。

焼き芋のふとけうとさや迢空忌   おるか

 「けうとい」という言葉は広辞苑でも辞林でもまず「うとましい」という意味がでてきますが、貴い・不思議であるという意味もありました。折口信夫もその意味で、木の人形を顔を見て「けうとさや」と歌っていたとおもいます。かつての神事が子供の遊びの中に残っているように、素朴な木の人形のなかにその昔の神の面影を感得する詩人・民俗学者らしい発想ですね。私も御芋の姿にふと芋食文化の南の国や、神と人が近かった始原の時代を想像したのであります。(おるか)

2003・9・8

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