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夏野菜  茄子  色絵魚藻文輪花鉢

   お浄土がそこにあかさたなすび咲く   橋かん石(かんは門がまえに月)

 茄子といえば思い出す句です。飄逸ですね。だいすきな句です。西脇順三郎は茄子を「紫色の悪魔」とかいていました。二人とも英文学の泰斗ですが、浄土と悪魔の対比が面白い。たしかに茄子の紫色は、この世の土から生えたとも思われない強烈さですものね。(おるか)

   茄子冷えて色魚の藻に遊ぶ昼   おるか

 

 茄子にしのび包丁を入れて色よく揚げ、冷ましておいただし汁に漬け、四五時間冷蔵庫で冷やす。おろし生姜を添えていただきます。魚や水草、泡の絵付けが楽しい鉢に盛りました。盛り付ける前に器も氷水で冷やし、夏の演出もご馳走に。

 日本料理は器に料理を「置く」または「入れる」ことを「盛る」といいますが、これはもしかしたら日本語だけのことかもしれません。今回はまさしく《盛り上げる》盛り付けです。日本料理の特徴だと思います。食卓の上で小深い鉢や小鉢を使うのも他の国ではほとんどないこと。例えば、英語では「dish」や「serve」ですが、それらには《盛り上げる》の意味はないはず。日本語では料理にだけでなく、毒でさえも「盛る」を使います。食の西洋化を言われる昨今ですが、小鉢に盛り付ける料理、とてもいいものです。(オットセイ)

2006年6月26日


夏野菜  茄子、ズッキーニ  呉須手双鹿七寸皿

成層圏東風梅雨の陽を乞ふバジルの芽    おるか

 秋や冬の野菜の深い味わい、春の瑞々しさ、にくらべ夏の野菜は元気な味。茄子やピーマンの畑になっているところを見たことがありますか。食べごろの実から、明後日の食べごろ、まだ豆粒くらいのもの、今花が咲いたばかりのもの、それぞれが一本の苗に。ツヤツヤで、ぴかぴかで、次から次へと成るさまはまさに元気の象徴。

 元気なままを頂きましょうということで、茄子とズッキーニをただソテーしただけ。味付けは塩とベーコン。間引きしたバジルを添えました。このあと粉チーズをかけてもいいですね。器は、何度も登場の呉須手の七寸皿です。(オットセイ)

2006年6月19日

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