旬の味と器 夏 2 に戻る
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苺のケーキ チューリップのカップ 緑の季節、野山を歩いていると妖精のようなさまざまな苺の仲間に出会えます。木苺や草苺、黒苺。葉の裏に五月の太陽のエッセンスのような一粒一粒が寄り添っている姿はほんとうにあどけなくかわいい。小さなものたちの世界を、覗いたような気がします。 自分でもジャムにしたりゼリーにして鮮やかな色を楽しんだりしますけれど、やはりプロの技は違います。山中温泉にほど近い、ミルティーユというお菓子屋さんのケーキをかいました。小さな猫や亀も呼んでティー・パーティーです。 ミルティーユのオーナー・シェフは代々和菓子の菓子匠の御家とか。神戸、東京、金沢などで修行されたそうです。甘さは控えめながら、、カシスの香り、セルフィーユの分量等、的確なアクセントがあり、高い技術に裏づけされたエスプリを感じます。左手前のタルト・ミルティーユは癖のないクリームに新鮮なブルー・ベリーが一徹なまでに積み上げられています。最近テレビでやたらに凝った意匠のケーキを見かけますが、ひとつぶのブルー・ベリーの味を最大限に引き出すより以上の美味しさを作り出すことが出来るでしょうか。そんな素材への繊細な配慮には、和菓子の心にどこかつうじるものがあるかもしれません。 ともかく美味しかった。真ん中の白いケーキ、カマンベール・チーズの風味と、とりどりの苺類のハーモニーが楽しい。左のフランボワーズの酸味は後を引きます。ほとんど私一人で食べてしまったんですが、なぜか体重がへりました。きっとすっかり満足して心が軽くなったせいでしょう。 ティー・カップの模様は、古代ペルシャの水差しに描かれていた、原種のチューリップとヒアシンスの図柄をアレンジしたものです。水差しの絵は時に磨かれてとてもいい味でした、そんな古拙な味わいが出せたらとおもいながら描きました。古代の人々も野いちごを摘んだことでしょうね。 いちご摘むをさなの夢に指ぬらし おるか 2004年5月17日
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