旬の味と器 春 2 に戻る

小女子   魚藻文荷葉形小付

 裏山の桜が咲き始めました。北陸も春爛漫の時節当来です。あたたかくなれば能登地震の復興もきっとはかどることでしょう。

 吉崎海岸でとれた 小女子が手にはいったので佃煮にしました。加賀市と接する福井県の吉崎御坊は蓮如上人の縁の土地です。今も浄土真宗のお寺が入り江に向って立派な甍並べ、ついでに蓮如上人の像がありがたくもボタンを押すと人生の悩みに答えてくれるというご利益つきです。山の上の旧跡からは北潟湖や入り組んだ入り江が眺められ、風光明媚の上に、さすがにその昔のは百姓と坊主の持てる国の要所らしい地の利水の利にめぐまれた場所であるのが眺められます。入り江の中に竹の棒がたくさん立っているのはウナギをとるためなんだそうです。静かな水面にこんもりとした緑の影を落としている鹿島の森はタブの木など暖地性植物の自生地で島中にアカテガニがサラサラと這い回っています。

 北潟湖のあたりの海浜の風景はのどかで好きな場所です。夏には加賀側の塩屋海岸の海水浴場にハマナスや浜昼顔が咲きますし、秋には煎茶の先生と北潟に映る月を待って茶会をしたことがありました。

 それでも御忌(蓮如忌)の近い今頃の、水も緑も朧に霞む季節が穏やかな風景に合っているような気がします。器は荷葉(蓮の葉のこと)のかたちです。内側に水中の景色を描いて、いわば入れ子状のイメージ。(おるか)

   御忌近き小女子日暮れ色に煮つむ  おるか

2007年4月2日

旬の味と器 春 2 に戻る