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甘草 ワンタン  蛇の目文皿

 ワンタン・スープの中の爽やかな緑色、何だと思います?萱草の芽です。夏の真昼の野原や道脇に大きな朱色の花を掲げているあの萱草。花が一重なのが野萱草、八重なのが藪萱草です。萱草の花そのものもたべられます。懐石料理でつかう萱草の芽はもっと若い爪の先ほどの時期が椀種や向付添えられています。春の滋養の塊のような、油味を感じるほどの強い美味しさです。しかし、写真の萱草くらいの大きさでも柔らかくほのかな甘味と苦味があってお野菜のように気軽に使えます。もっと利用されていい山菜の一つでしょう。

 ユリ科独特の甘味はリコリス・ティーなどハーブ・ティーにもされますね。あれも大好き。なんとなく喉にいいような気がします。甘味が印象的なので甘草という字を当てたりしますが漢方薬の甘草は豆科の植物で別物です。最近は甘味料もさまざまありますがユリ科の甘さは苦味とあいまって奥ゆかしく、花を想像する楽しさもあって、おつなものです。萱草は古い時期に中国から、この花を見ると世の中の愁いをわすれると言う言い伝えとともに伝来したので、忘れ草として歌にも歌われています。木立の間に燎のように咲いたり、日盛りの田舎道で虫にたかられたりしている萱草をのんびり眺める余裕があれば、本当に愁いを忘れられるかもしれませんね。

兜子忌を過ぎ忘れ草甘苦し    おるか

2004・3・2

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