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浅葱  染付桜文小鉢

 浅葱、胡葱とも書きます。胡の字がつくことからオリエントから中国へ来たかともいわれます。が、ともあれ日本書紀、万葉にも歌われた古くから親しまれてきた春の味です。
 椎茸や浅利の剥き身などとあえても美味しいですが、今回は浅葱だけの酢味噌和え。素朴な香りをたのしみます。

 お寺の山門ちかくによく「不許葷酒」と書かれていますが、その「葷」とは浅葱始めニンニクや蒜などユリ科アリウム属の面々です。精進料理にこれらの薬味さえなかったら、ずいぶん口寂しい 気がしますが、そこは融通無碍の仏教のよろしさ、慈悲忍辱の忍辱を隠語として隠れて食したという風聞もなきにしもあらず。健康にもいいことは漢方の神農本草にも載っているくらいですから用いないはずもありません。源氏物語で風邪をひいた末摘花の女君が大蒜の臭いをさせていたところなど残酷なくらいな書き方でした。

 器は染付桜の紋様をちらした小付です。外側には蕨からくさと呼びたいようなもくもくとして古風な唐草を配しました。やわらかな形もいかにも日本的。この季節の食べ物のなんとでもよく似合います。山菜のお浸し、若竹煮、お作り、なんでも。

浅葱や骨なきごとき手のなかに   おるか

2003・3・17

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