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新茶  花菱文汲出し茶碗  鯖杢茶托(佐竹康宏作) 色絵双蝶文皿

 八十八夜も過ぎ、新茶の美味しいこのごろです。お茶はその採れた土地の水で淹れるのが良いとききますが、なかなか、そうもいきません。加賀の山水で九州のお茶を淹れました。

 新茶の魅力はなんといっても香りです。緑の、やわらかな、しかし底に樹液の強さも秘めた香り。五月の輝きのエッセンスのよう。 新茶が喜ばれるのも、この新緑の季節の中、緑の中の緑をいただく気分の良さのせいでしょう。

 香りは不思議なものです。花は原種が良く匂い、交配を重ねれば重ねるほど、香気は薄れてゆくといいます。香りというあやしく官能的なものは、生命力のほの暗い奥処から顕ってくるのかもしれません。新茶を淹れて、その土地土地の五月の香りに目を瞑ります。

夜の鳥の音を収めたる新茶かな  おるか

2002・5・6

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