縄文文化を巡る!(番外編)  
 「waiwai隊」 縄文遺跡を巡る旅(四国・愛媛編)・・香川県の縄文時代
 2017年7月6日(木)
≪香川県埋蔵文化財センター(坂出市)≫

 縄文遺跡を辿ってみよう・・と思った時から、思い付くままに四国はもとより全国各地の遺跡をネット検索しています。その中から、ここへ行ってみようか・・と思う遺跡が見つかります。
 しかし、遺跡の発掘と発掘された遺物の展示がされているのかどうかが分からない場合があります。そうです、遺物の調査のために大学の研究室に置かれたまま、何年も、否、何十年も放置(?)されている例を聞きます。そして、何次かに渡る発掘調査を終え報告書の発表を経て、しかるべき展示がなされている遺跡は、果たして何割あるのでしょうか?
 多分、これらの事が真面目に取り組まれているかどうかは、自治体の財源だけではなくて、自治体や各教育委員会での位置づけがあいまいな事が、事態を後ろ向きにしていると感じます。
 小生の香川県の縄文の旅は始まったばかりですが、このセンターを手始めにして、広がって行けば良いと・・一応、楽観的。
 

 香川県の埋蔵文化財センターだけじゃなくて、各県や市町村の教育委員会が展示している施設は大半が土・日・祝日の閉館日となっています。しかし、≪指定管理者制度≫の適用などで運営されている会館などは、土・日・祝日は開いています。

 さて、平日の高速道路の料金は私たち年金受給者には厳しいものがあります。一時の高速道路料金一律1,000円などが懐かしい限りです。そんな事は兎も角、この手の埋蔵文化財センターなどは無料で見学出来ます。丁度、昼過ぎに着いた、目的の第2展示室には以下の≪ごあいさつ≫が掲げられていました。



≪ごあいさつ≫

 香川県埋蔵文化財センターでは、遺跡の発掘調査を行い、その成果をまとめ、県下の歴史の解明に努めています。今回は、香川県内で見つかった縄文時代の遺跡を紹介します。
 縄文時代は今から約13,000年前(*)から約2,500年前まで、10,000年以上も続いた長い時代です。縄文時代になると、日本列島に住んでいた人々は土器を作るようになりました。この多くには表面に縄目のような文様がつけられていることから、縄文土器と呼ばれ、この土器を使う時代を縄文時代と呼ぶようになりました。
 西日本は東日本に比べ、縄文時代の遺跡が少ないと言われていますが、香川県では近年の発掘調査で、三豊市に近在する本村中遺跡をはじめ、縄文時代の遺跡が30以上見つかっています。
 今回の展示では、香川県内の縄文遺跡や、縄文時代の人びとが使用した土器・石器などを紹介します。

 *縄文時代の始まりは16,000年前という説もあります。

  
  

縄文土器 深鉢 後期、永井遺跡
 
 

 
本村中遺跡
 
弘田川西岸遺跡
 

 
永井遺跡
 

 
大浦浜遺跡・ガンド浜遺跡
 
前田東・中村遺跡
 

 
小山・南谷遺跡

 今回、展示されている遺跡は上記7遺跡のみでした。
平野部や島嶼部のみとなっています。

 
 一通り見て回った後、相棒がある土器片に首を傾げていたのです。それは、右の写真の土器でした。「何故、穴あきなんだろうか?」との疑問です。
 私たちが見学していた時間が、丁度、昼時でした。受付のカウンターで中に居た方にその旨を伝え、学芸員さんに聞きたい旨を伝えると、その方は直ぐに電話を取り、何やら伝えていたのでした。
 直ぐに、2階から降りて来た女性に、先の件について相棒が尋ねたのでした。その学芸員さんは「さぁ〜、何でしょうねぇ〜」との応えです。相棒は「蒸し器みたいなもんじゃ〜無いんですか?」とか、いろんな推論を述べていましたが「判らないことを推測するのが楽しい」など、結論は出ません。

 この土器に限らず、どういう目的で使っていたのかが判らない遺物って良いものですね。ロマンがあります。

 その事はさておき、遺跡の発掘は圧倒的に公共の工事に伴うものが多数なのは何故なのでしょう。道路の新設、飛行場や学校や病院。しかし、鉱山や金山を掘り当てる如く遺跡を掘る事は不可能です。それも、田圃が拡がり住居が立ち並んだ現代、どこにあるのかが判らない場所を探り当てることは出来ないでしょう。
 
 ≪以下は、第1展示室≫
 埋蔵文化財センターの第1展示室は≪遺跡・遺物から見た香川の歴史≫として、各種出土物の展示をしています。

 こちらに展示の6遺跡も、第2展示室で展示している遺跡と同様に平野部からの出土となっています。四国の他県では、山間部の洞窟遺跡や洞穴・岩陰遺跡が見られるのに対し、山間部からの発掘はありません。そのことは、四国の他の3県を跨ぐ脊梁山脈から外れているからなのでしょうか?
 それとも山地の植生の違いなどで、縄文人が狩猟の対象とする動物や堅果類が取れなかったのでしょうか?

 いずれにしても、遺跡が発掘されない限り、結論らしいものが出ません。


 上掲の≪ナウマンゾウの骨≫は、瀬戸内海から取り出されたものと紹介されています。海の底から探し出されるのは、偶然にも漁師の網に引っかかって上げってくるそうです。     
 
第1展示室は、県下7遺跡の展示
 ≪旧石器時代(サヌカイト)≫

 
≪縄文土器など≫

 
≪弥生土器など≫ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
この地方で産出の“サヌカイト”について、以下に坂出市のhpから引用します。

≪サヌカイトの生成と特徴≫


 坂出市東部にある五色台及びその付近の山頂には,古来から讃岐の名石「カンカン石」として親しまれてきたサヌカイトが産出します。和名を「讃岐岩」といい,たたくと「カーン,カーン」金属音を発し,心地よい余韻を残して響きます。人々は,この岩石を江戸時代のころから「馨石」(けいせき)とも呼び親しんできました。
 サヌカイトは,この五色台や屋島をはじめとする本県北部地域に広く分布する古銅輝石安山岩の一種で,瀬戸内地域に起こった火山活動によってマグマが地表に流出し,冷え固まってできた岩石です。
 サヌカイトとその類縁岩石は,紀伊半島中部から本県を経て,九州北部までの分布を示し,大阪府の二上山には香川県に分布するものとよく似た岩石が見られます。 


≪石器としての利用≫

 人類がこの地球上に初めてその姿を現したのは約250万年前とされていますが,現在の香川県での人類の足跡は約3万年前にさかのぼります。
 この頃からサヌカイトは道具として使われはじめ,弥生時代の終わり頃の約1700年前まで,主に物を切ったりする刃物として盛んに活用されています。
 3万年前から1万年前までは旧石器時代と呼ばれていますが,この時代の遺跡が瀬戸大橋建設に伴って多数発掘調査されました。調査結果によれば,与島西方遺跡では約13万点,羽佐島遺跡では約35万点を数える膨大な数の石器やその破片が出土しましたが,石の種類を調べてみますと,全体の98%近くがサヌカイトを材料にするものでありました。
 サヌカイト以外では,安山岩,黒曜石,流紋岩,水晶などが出土していますが,北海道,関東,九州地方で石器として多く利用されている黒曜石は数十点と少なく,原産地が近くにあり,しかも割れると鋭い縁をもつサヌカイトが石器に適しており,盛んに使われた様子がうかがえます。
 サヌカイトが石器に多く利用される傾向は,次の縄文時代や弥生時代になっても変わっていません。
  
 
 上記サヌカイトに関する引用ですが、このサヌカイト製の石器は、北九州から瀬戸内の各地域を通り近畿地方まで利用されているようです。その使用時期についても約3万年前から使われているという事は、旧石器時代から弥生時代にかけて使用されているようですので、非常に興味深いものです。この貴重な石器を手に入れるのに、どのような手順で九州や近畿地方へと伝わって行ったのか、また、はるか遠方からわざわざ掘り出しに来たものかと興味深々です。
 果たして、どのような形での交流の手段があり、どのような集団が採掘し加工したのかと思いを馳せるものです。


 さて、小生が先日『上黒岩遺跡』の件でも扱った報告書に載っていた年代区分は、以下のとおりだが、

 旧石器後期  (38,000〜16,000年前)
 縄文草創期  (16,000〜11,700年前)
 縄文草期   (11,700〜7,000年前)
 縄文前期   (7,000〜5,500年前)
 縄文中・後期 (5,500〜4,000年前)
 縄文後・晩期 (4,000〜2,800年前)
 弥生前・中期 (2,800〜2,200年前)

 縄文時代と呼ぶ目安として、出土された“土器の作り”を基にしているからです。つまり、遺跡から掘り出された遺物が、古い地層から新しいものまでが掘り起こされる遺跡は数が少ないものと思われる中、古の一時期のみの発掘でも年代の特定は困難なのでしょう。年代の特定が困難な地層の判別の困難な場所から掘り出された土器と違って、放射線炭素年代測定が可能な遺物と同時に掘り出された土器や石器の年代については、口を挟むものではありません。

 上記時代区分での特徴的ものとして、草創期から前期の期間がなんと、10,000年余りあります。そして、中期から晩期が2,700年という区分となります。このことから、旧石器から縄文に移行する時期も地域によって代わっていたり、また、草創期から中期までの区分についても同様にあいまいなのも仕方ありません。土器や石器の利用については、新しいものと同時に古いものを利用しても良いのです。

 弥生と区別される年代に縄文土器が掘り出されているのも、別に驚くことではありません。現代、デジタル時代と呼ばれる21世紀にアナログ機器を利用していても何ら可笑しくは無い筈だからです。