休憩室 【山のトイレ事情!】 
 

皿ヶ嶺・竜神平のトイレ
 
 今回取り上げるのは、≪山のトイレ≫である。断じて“山でのトイレ”の問題では無い。このトイレの問題では、つい先年、石鎚山・二の鎖元及び堂が森の愛大小屋脇に綺麗なトイレの設置が実現した。これは石鎚山トイレ問題検討員会(会長 白石崇)の活動によって実現したものだ。  こちらからその辺りの経緯も  

 小生は石鎚山や堂が森に新設されたこれらのトイレを利用したことは未だ無いが、利用するルートの頻度にもよるものと思われる。大抵の登山者は登山口辺りで済ませてから入山するのが常なので、山での宿泊でもしない場合はトイレの利用はそれほど多くはないものと思われる。しかし、体調の良い日ばかとは限らない。当然、お腹の不調は突然にやってくる場合だってある。そこで、人が集まる小屋傍などにトイレを設けるのは自然な考えなのである。

 そんなトイレが、「老朽化して、維持できないので撤去する」憂き目にあうと云う。小生が良く通う皿ヶ嶺の竜神平にあるトイレのことだ。そして、撤去する持ち主が久万高原町だと云う。このトイレは、近年、男性用便器が詰まっていたり、匂いも酷くて、とても進んでは利用出来ない代物ではあったが、緊急用としては、立派に役立っていたのだった。

 先日(7月25日)竜神平へ立ち寄った際、久万高原町の職員が「トイレの撤去の件でアンケートを取っている」と話し掛けて来たのだった。職員は「トイレの整備をするには費用が嵩むし、更改するにも莫大な費用が掛かり、今は登山口の利用者が多い東温市側とも相談したい」とも言っていた。以下は、今回の件に関して小生の考えを述べるものだが、四国の山中に在るトイレは大概、小屋とともに設置されている。そしてそれらは、1960〜70年代に設置後、更改されないまま放置されている場合が多いので、近年、問題視されているのだ。
 

町役場の掲示版
 
≪山中のトイレについて≫
 四国の山小屋で有人の営業小屋は、百名山の石鎚山や剣山以外は数えるほどしかなく、近年、前述の小屋以外は営業的に成り立たなくて廃業された小屋もある。そんな中でのトイレ問題である。山中でのトイレの管理は大変な事である。一部、北アルプスなどの大型ホテル並みの設備の営業小屋を除き、大方の山域にあるトイレは整備されているとは言えません。現在の日本では、自然公園などに国や自治体が費用を掛ける、という考えには辿り着いていない現状があります。

 まして、人口が減少の一途の四国内の貧乏な自治体の久万高原町や東温市では尚更のことです。しかし、“だから、仕方が無い”のでしょうか?

 皿ヶ嶺・竜神平は県都・松山の近郊にありアクセスが簡単な場所に位置し、春の希少な花々から霧氷の花開く冬の季節まで親しまれています。また近頃は、中国地方からも団体で訪れる人たちにも出合います。貴重な自然を残す為にもトイレの必要性を感じるものです。


≪自治体のとりくみについて≫
 自治体が地元の登山団体などに依頼して登山道の整備を行っている例も聞きます。近年、“ごみ持ち帰り運動”が徹底してきて、百名山などではボランティア団体などの活動も活発です。そんな中近年、山中のトイレの汲み取りを人力(一斗缶にし尿を入れて、各自が担いで降ろす)で行っている登山団体も、一部、徳島・高知の活動以外は聞かなくなりました。

 中高年登山者に登山ブームが起こり、富士山や槍ヶ岳に観光客然とした登山者が押し掛けることとなった近年、“山ガール”の出現で登山の様態も様変わりしてきた中、従来の垂れ流しトイレや浸透式トイレの環境への配慮などが問題となって、各地でバイオトイレなどが導入されて来ました。営業小屋や各自治体での取り組みは、百名山などの山域では浸透し随分と改善されていますが、予算を持たない辺鄙な地方にはなかなか浸透しきれていないのが現状です。

 後日、前述の白石氏と雑談中に“竜神平のトイレの件”での久万高原町の職員の話などを話題にすると「その件では東温市の担当とも話をしたが、『久万高原町側の施設に東温市が助成することは出来ない』と言うが、今は東温市側の登山口の利用ばかりじゃないか。あちらは久万高原町側じゃとか細かい事言わんでも・・」「いずれにしても、高知県の山小屋のトイレでも参考にしたらどうだろう〜」と進言したとの事。

 上述の例は、同様な悩みを抱えている山中のトイレの改善等で苦悩している阿土国境の山三嶺の事で、その例を該当のサイトから考えてみようではありませんか。ちなみにお亀避難小屋のトイレは、汚物処理微生物を投入しているそうだ。  それが載っているサイトはコチラから 


 *自治体の安易な対応について・・≪竜神平の湿原復興の取り組みについて≫・・余談。
 皿ヶ嶺・竜神平は、1960年代には松山の近郊の手頃な山ということもあって、夏場はテント場として利用されていたり、雪の降る冬期にも若者たちがスキーを楽しんでいたと聞きます。数年前に「竜神平を元の湿原に戻そう」と、NPO法人によるプロジェクトが計画を実行に移していたのですが「自然公園なので」の理由から、「作業の許可が下りない・・」と、計画がとん挫していると聞きました。  その計画についてはコチラから 
≪尚、計画の中止についてはどういう理由なのかの詳細については不明なので、ここでは言及は避けます≫

 
≪参考:山でのトイレ≫
 排泄は自然現象であり、登山口で用を済ましていても、登山形態や体調などによって山中でもよおすこととなるのも仕方が無い事でもあります。麓と違って山中のテント場には、トイレの設備が無い場合が殆どです。また、冬ともなると利用可能なトイレは限られます。
 昨年暮れに北海道・黒岳に登頂後、“お花摘み”に行った際に滑落死した登山家の谷口けいさんの滑落事故は衝撃を受けました。2008年に登山界の最高栄誉とも云われる「第17回ピオレドール賞」を受賞した世界的な女性登山家の悲報でした。何故、彼女がザイルを解いて“お花摘み”に行ったのかなど、変な憶測が介在する余地はここにはありません。
 小生の山歩きの中で偶然出合った“お花摘み”は、登山道での目撃が殆どであり、予め、遠くから視認出来た場合は、小生の方が木の裏に隠れて見えないように気を遣っていたりしました。また、最近は滅多に見ないのですが、ティッシュペーパーを登山道や道端に放置している輩までいました。以下に、参考までに山でのマナーを引用(日本山岳会サイトより)します。


トイレの無い 野外や避難小屋では
  1. まず、麓で用を済ませてから入山し、山中ではしないのを原則としましょう。
  2. 排泄場所は、沢や水辺からできるだけ離れ、‘水場’の上流は絶対に避けましょう。
    地形や植生の状態にもよりますが、一つの目安として、水際から少なくとも20〜30mは離れましょう。
  3. 植物が生い茂って落ち葉があり、雨水で流失の恐れのない地点を選びましょう。
    植物の少ない砂礫地や岩場は避けて下さい。
  4. スコップを持参し、周りの植生に気を付けて、汚物が隠れる位の穴を掘り、土をかけるなどの後始末をし、紙は必ず持ち帰りましょう。
  5. 雪上でも雪穴を掘って埋めましょう。
  6. 美味しい清水や自然の景観を守ることを念頭に、安全で可能な限り流れから遠ざかり、完全な埋没処理をしてください。
    自然には、動・植物などの有機物を腐らせ、分解して土へ返す大きな浄化能力があります。植生の豊かな広葉樹林帯などでは、大きな自然のはたらきを期待できますが、植相の貧弱な高山帯の自然は脆弱(ぜいじゃく)です。
    また一人ひとりのわずかな量でも、一カ所に集中すると処理しきれず、生態系や環境に大きな影響を与えます。尿も多量に集まると問題になります。