藪漕ぎの楽しみ

牛コバ〜烏谷山(摺鉢山経由)〜葛川越〜クルシ谷〜白滝谷〜牛コバ

【アクセス】

 葛川坊村町にあるバス停の脇を地主神社へと入る。神社の前に5〜6台の駐車スペースがある。又、明王谷脇の林道を上がると20台余りの駐車スペースが確保されている。その直ぐ上で林道は、通行止めのチェーンがあるので、これから先は歩く事となる。尚、バスの便は一日数便なので、事前に問い合わせが必要だ。

 

 

 

2002年12月1日

 先週の“関西の藪デビュー”の予告どおり、烏谷山からクルシ谷のコースの決行だ。しかし、正確な情報に乏しくて、ぶっつけ本番(偵察なし)だけでの完走は難しいかな?との考えが頭をよぎる・・とりあえず、下山ルートを谷の下降としているので、ロープだけは持参することとし登山口に向かった。

 

 

 

 明王林道の広場に車を置き、明王谷沿いに歩を進める。「以前歩いた時と何か印象が違うな!」と感じながら歩いていると、林道脇の木々が切られていて、新しく紅葉や桜の幼木が植えられていた。傍らに「平成14年度語らいの森整備事業」の標識が立てられていた。「木を切って木を植えるのは何なん?ほんで、切ったままで放っておく事はないのになア」と、相棒がブツブツ云っている。とにかく金の使い方の知らない“お役所”の仕事には、呆れてしまう。ともかく、先日通った“伊藤新道”を見送り、やがて“口の深谷”出合を過ぎ、白滝谷を渡ったところが“牛コバ”である。林道歩きは30〜40分だ、これからの登りに備えて小休止である。

 

 

 

 牛コバからの道は、つづら折れに尾根を越え“口の深谷”へと出合うのだが、今日は尾根沿いへと道をとる。「目印のテープがあるから判ります」と先週、烏谷山で出会った人は云っていたが?そこかしこにテープがあり、尾根道への踏み跡を見出せないまま、道が谷へと近づいていくではないか?「見過ごしたかなあ〜」「さっきの尾根あたりじゃない〜」と相棒と意見が一致。「それなら、そのあたりを上がったら、どっかで尾根道に合うじゃろ〜」と、葉の落ちた林に踏み込んだ。予想通り50mほどの登高でテープの付いた道に出会った。

 先週も落ち葉を踏みしめながらの山行だったのだが、あたりの景色を垣間見る事は出来なかった。しかし、今日は尾根道なので、背後の御殿山や右手の白滝山を見ながらの登高だ。踏み跡とテープは“造林公社”の杭を忠実に辿っている。

 

 そして、今しがた用を足した(?)と思われる、鹿のフンに頻繁に遭遇する。ふと振り返るとコヤマノ岳の背後に武奈ケ岳が頭を覗かせていた。左手には、堂満岳も顔を見せている。淡々とした歩みで摺鉢山に着く。そこは何もなく、単なる尾根上の1ピークだった。

 

 

 小休止の後、すこし下って登り返すのだが、路は植林との境目に続いている。今までと違い、尾根は顕著となり、相変わらずテープがよく目立つ路だ。烏谷山は先週と同じ佇まいだった。予報とは違って、穏やかな初冬の日差しを浴びて、ここで昼食とする。今日はびわ湖も霞んでいて、その全容は望めない。さて、私の心の高ぶりは“不安”なのか?“期待”なのか?とにかく、足を前へ出さない事には進歩は無い。躓いても、転んでも“前進”有るのみだ!

 

 烏谷山から縦走路に出ると、先週と同じように登山者によく出会う。最初に出会ったのが、単独行のご婦人だった。挨拶を交わすと「白滝山から木戸峠へ抜けて縦走路を歩いて来た・・・」との事だ。すぐ後から大きなザックの青年グループが上がって来た。比良の山々では、若者とよく出会う。そして、今日の下降路に予定しているクルシ谷が望める場所でシャッターを押して、間もなくで葛川越に降り立った。そこは先週ちらっと覗いて見てはいたのだが、足を踏み入れると身が引き締まる思いだ。

 やはり、路はおろか踏み跡さえ見出せない。もちろんテープなんかは、期待出来ない場所だった。だがしばらくは、葉を落とした雑木の中を緩やかな傾斜の下降だった。所々で“これが昔歩いていた道なのかなあ”と感じる処もあったりして、獣の住処と化した谷を降りていく。だがこの勾配が出合まで続くとは思っていなかった。やがて水が現れてきたが、相変わらず谷は前方が確認出来る勾配である。そして、歩き易い処を選びながらの下降にも終わりの時が来た。前方に空間が現れたのだった。ここで体勢を立て直すために小休止である。

 

  

 相棒を残しての偵察はいつもの事で、『私が落っこちたりすれば、降りれない・ケータイは無い・ツェルトは無いの、無い無いづくしだが、食料だけはあるので救援隊の到着まで、一週間でもそれ以上でも生き延びるのはうけおいだ。つまり、一人で降りる事はないということか?・・・』は・・ともかくとして、ルートを探しながら降りていると「右の方がルートじゃないん〜」と、声がする。

 ザックに忍ばせたロープの事もあるし、降りれるようなら沢添いに・・と、なるべくなら困難なところを降りようか・・・などと、心の奥で思っていたのかも知れないが、『困難に直面した時に打開するのは己自身であり、己の意思が大半を占める』そう思っているので、目の前の現実からは逃げない。立ち向かう。その場の最良の方法を選ぶ!・・・そう在りたい!

 相棒に合図を送ったのは、下降の算段が出来たからだった、慎重に沢添いに降り左手をトラバースし、大木にロープを回し降りてみる。しかしまだ一ピッチ必要で、川床まで10m余りあるが真下には降りれそうもない。どうもハングぎみなのである。川下に向かい、ダブルにしたロープいっぱいまで降りる事にした。成功である。次は相棒の番だ!

 下から、あーだ・こーだと指示の声を上げるが、本人は必死に降りているみたいだった。そして程なく彼女の顔が安堵の表情へと変わった。(残念ながら、この時は写真を撮る余裕がなかった。)

 

 

  

 

 川床に降り立ち右岸へ渡ると、ルートは大回りするみたいだったが、谷沿いに降りれた。高度計を見ると、白滝谷の出合はすぐ近くの筈である。しかし、すぐ先で滝に出会った。ここは、右岸沿いへと、踏み跡が降りているみたいだった。「獣道か?沢登りの高巻きの路かなあ!」と言いながら、急勾配の路を木々に縋りながらの下降である。谷に降り立って滝を見上げると、20mは越える滑滝だった。少し降ると、右手から落ちている谷が白石谷だった。そして、前方に朽ちた木橋と白滝谷沿いの登山道に出遭ったのだった。

 小休止の後、登山道を牛コバへと降りる。よく整備されていて、真新しい木橋が架かっていた。谷を何回か渡り、落ち葉の道を進むと林道の終点に着いた。広場にザックを置き、湧き水でのコーヒタイムは、今回の山行の祝杯だ。

 林道を牛コバへと歩を進めると、若者が大きな鍋にラーメンを入れていた。その五人グループは、縦走路で会った若者達だった。「中高年なら豚汁か何かを持って来るのに、即席ラーメンとは・・若いなあ〜」と相棒がささやいてきた。林道歩きもしばらくで、朝方の広場に着いた。

 

 

 

 ナイナイづくしになったら、じっと待ってはないじょ。なんとか降りると思うわ! まぁ、おっちゃんよりは、一週間は長く生きるとは思うけど・・。(皮下脂肪のお陰じょ!)

 懸垂下降の真似事は出来たけど、足が滑ってぶら下がりそうになった時は、肝を冷やしたじょ。真剣な顔をお見せ出来ないのが残念 (~_~;) だわ! 危険な事はこれっきりにしてネ。