藪漕ぎの楽しみ
【石ヶ山丈尾根踏破計画】(2001年10月21日)
前回の下山路は、上部鉄道跡を石ヶ山丈(いしがさんじょう)まで歩いて、魔戸の滝へと下山したので、今回は石ヶ山丈の尾根を辿る計画を実行した。昨日の天気予報と、がらりと変わって(気象予報士はだ〜れだ)雨模様の中、カッパのズボンを履き出発だ。
@を登山口として植林の作業道を辿る、A地点までは、何の変哲もない路だ。が、前回は下山路に使用した、石垣が積まれた上部鉄道跡への路(消えかけた指導標には、牛車道と記されている)は、野薔薇が生い茂り(B地点)、体を小さくしながらの前進が暫く続く。
まもなく、上部鉄道跡への指導標に出会い、踏み跡を辿ると、路はだんだんと確かなものとなり、自然と水平道の上部鉄道を歩くようになる。やがて、C地点が目指す石ヶ山丈(いしがさんじょう)である。ここは、地図上は十字路となっているが、実際は兜岩への尾根とマイントピアへと降りる路は、10m程ずれているのだ。ここら辺りは広々とした、石垣の積まれた明るい処である。その昔、東平のはずれの第三通洞からここまで、トロッコが通っていたらしい。今となれば、建物もなにも無いが・・・
小憩の後、兜岩への尾根を辿る。石垣の間を縫うように、赤テープに導かれて尾根を辿ると、やがて、松茸の生えていそうな1056.2mの三角点を見送り、小ピーク辺りで “一本たてる”。 “松茸探しに、そんなに時間をかけられない”と先を急ぐ。・・・辺りは、ガスが視界を遮って、本降りになるまえにカッパの上着を羽織って出発だ。 小ピークからは、鞍部へと少し降りる。地図を見ると、ここから出ている窪みが、西種子川沿いの路に在った、例の“壊れかけた小屋”の脇に流れる沢へと続いているようである。前方を見上げると、大岩が現れた(D地点)。赤テープを探すが、見当たらない。どこでも登れそうだが、左手を巻く。やがて、スズタケの繁る斜面に出会う。踏み跡も定かでなく、テープがないと、方向が見定められないような尾根だ。 既に、スズタケとの格闘と雨のため、カッパも下着も濡れている。相棒の「以前、付けたビニールの印を見つけてネ!」の声を聞きながら、石楠花の繁る処に差し掛かる。
そこは、見覚えのある「風景」だった。前回は上部鉄道の道が見つけられなくて、植林の作業道を尾根に向けて直登し、尾根路を探すのに時間を食ったが、古ぼけたテープを発見したのだった。そして、アケボノツツジの群落に出会うのである。・・・と、同行者の「あったァ」の声に振り返ると、前回の山行時に付けた、ビニール袋の切れ端(前回は、赤テープを持参しなかった)が、小枝に結ばれていた(E地点)。ここからは、岩場の展望所(1388mピーク)までは、間もなくだった。しかし、今日は雨の中だし・・テルモスの紅茶を飲んで、ガスの中の兜岩に向け、出発である。 スズタケと、密集した潅木を掻き分けながらの“アルバイト”は、体力の消耗も激しくて、おまけに、展望のきかない中の前進は、気分を滅入らしてしまう。どこまで藪を漕いでも、兜岩の北側を巻く処に出逢わない・・「こんなに遠かったのか?路を間違っていないか?」視界が利かないことで、余計な考えがよぎる。と、路が斜面の北側に廻り込んでいる(F地点)。・・・「正解だったんだ」・・・ここからは、植林を目指して適当に進むといいんだ(F‘地点)。 西赤石の北斜面の道に出会い、ツェルトを張る。雨足は、時々激しくなる。「今日は西赤石にも、兜岩にも、誰も登ってこんじゃろなぁ」と云いながら・・・ガスに火を点け、ゆっくりと昼食を摂る。
私たち以外は、誰も居ない兜岩を見送り、ガスの中へと下山を急ぐ。紅葉の黄色は紅に比べ、ガスの中でもぼんやりと浮かんで、幻想的だ。今日の登路を右手に観ながら、前回利用した上部鉄道跡へと降りる。稜線の藪路に比べ、歩き易い事は高速道路なみである。上部鉄道跡の道を右にとり、石ヶ山丈へと歩を進めるが、沢に架かる“朽ちかけた木橋”は雨で滑りやすく、何回か巻き道を利用しながら進む。 やがて、下山行程の約半分にあたる、東平への分岐の処で小休止とする。雨は相変わらず強くなったり、弱まったりだ。あまり長く休憩すると体が冷えるので、飴玉を含んで出発だ!暫く進むと、左手の展望が開ける場所に着く。深く切れ込んでいる足谷川の川向うに、東平が雨に煙っている。何度か橋を渡り、沢を巻き、“朽ちかけた木橋”を四つん這いになって渡る。 辺りの風景を見て、相棒が“黒部の水平歩道みたいやねぇ”と囁く。そういえば規模こそ違え、その“かもしだす雰囲気”は、良く似ている。そして、足谷川に向かって切れ落ちる斜面に付けられた、このトロッコの通る道が廃道になって早、40年になろうとしているのだ・・現在は、通る人も疎らである。
“東平への分かれ”から一時間ほどで、朝方通った“石ヶ山丈”に着く。 小憩の後、予定どうり“マイントピアへの下降路”へと進路を取る。暫く降りると、指導標を見つけた。文字は消えかかり判読が難しいものの、“牛車道”と書かれているみたいだ。当初の目的は、林道へと降りる道の確認だった。が、今日は “牛車道”を引き返すこととする。踏み跡の疎らな道に、最近通った痕跡である、切り開いた鉈の跡を確認しながらの帰路は、直ぐに見覚えのある、“上部鉄道への分岐”のある場所へと導いてくれた。(次回は、林道のヘアピンで見つけたテープを、辿ってみよう・・)
最初はしぶしぶついて行っていた私も、この頃はパズルを解くみたいに道が繋がってきて面白くなってきたんじょ (^o^)/
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