藪漕ぎの楽しみ

 

稲ガ谷〜雨乞岳〜東雨乞岳〜三人山〜いいなのコバ〜沢谷峠〜郡界尾根〜武平峠下P

 

 

【アクセス】

 鈴鹿の山々へのガイドブックのアクセスは、三重県側からの記述しかなくて、私達のような地理に疎い者には大変不親切だと判るまで、少々の時間が必要だった。大阪方面からは名神高速を利用して、R1号線から鈴鹿スカイラインを目指す。稲ガ谷の登山口は、鈴鹿スカイラインから直ぐの谷脇にあるが、駐車スペースは狭くて4・5台のスペースしかないので注意が必要である。もっとも、駐車スペースはスカイライン脇には随所にあるので、心配無用なのだが・・・

 

稲ガ谷〜雨乞岳

 稲ガ谷の登山口には、既に二台の車が停まっていて、中高年の男性二人組みが出発準備をしていた。私達も準備を整えて、二人組みに続いて出発である。脇に立派な愛知学院大学ワンゲル部の石碑が建っていた。

  このルートは今春、メールで知り合った“Pーちゃん”と歩きたかったルートでもある。その折は、生憎の天候でのコース変更となり、別ルートからの山行となってしまったのだった。

 

 さて稲ガ谷のルートは、「全コース炭焼道を利用しての登高で、踏跡はハッキリし、道標もあり、テープ多し。迷うこと無し。」の案内文がある詳細地図を手にしての万全の構えだ。出発は8時過ぎだった。

 

 谷は、それ程の水量では無くて、いきなり右へ左へと路は続いていて、やがて急斜面の登りとなった。右手の谷の音が聞こえなくなる程、急斜面の登りは、ロープが続いていた。そして、植林の林となり路は平坦地を辿る事となる。やがて、谷の音が近づいた所で、前方が明るくなった。

 

 

 稜線を眼の前にして、小休止である。地図によると、ここから谷は西方へと曲がっている。そして路は谷へと降り、右岸へ左岸へと続いていた。やがて、谷幅が広くなってきた。つまり、傾斜がゆるんできたのだった。この辺りは自然林に被われた気持ちのいい場所だった。

 

 

 ここまでの路で、人に遇わないのがいい。「わざわざこんな所まで来て、梅田や万博公園を歩いているのと同じでは、意味が無い・・」人に遇わない路を辿っていると、“素敵な路だ!”と決め付けてしまう私である。

 

 路は、相変わらず谷沿いへと続いていて、少々の高巻きも直ぐに谷へと降りて行く事となる。木々の緑と紅と黄の競い合いはお互いの主張であり、陽の光はお互いへの恵みとなって降り注いでいるのだ。やがて前方に人を認めた。今日ここを歩み始めて、初めての人だった。その二人組みは、私達が近づく前に出発したのだが、私達も木漏れ日の脇で小休止である。 

 

 炭焼きの路は当時を偲ばせてはいるが、辺りの木々はもうその賑わいを語ってはくれない。「男は15kg俵4俵、女は俵3俵背負っての大変な道である」の詳細地図の記述に感心しながら、所々にあるカマアトをやり過ごして進む。古ぼけた標識を過ぎると、急坂が現れた。

 

 上方に先ほどの二人組みが見えた。ザレた急坂は歩き難く、相棒のピッチが上がらない。地図にある岩峰は目の前だが、ゼイゼイ・ハアハアの登りは汗を噴出す。岩峰を巻いて、急坂は笹の道へと続いていた。“稜線は近いぞ!”と言い聞かせて、一と踏ん張りで尾根の道に出合った。出合いの広場で先ほどの熟年ペアが休んでいた。目の前の雨乞岳も、後方の東雨乞岳にも人の姿がある、いつもの頂上風景である。

 

 

 雨乞岳には10時半頃着いた。六月の雨乞岳行(P〜ちゃんとの山行時)の際は、全く展望が無くて、辺りは真っ白だったが、今日は大展望である。御在所岳も鎌ガ岳も確認出来るし、東雨乞岳も指呼の間である。中休の後、笹が覆った稜線の道を少しで東雨乞岳だった。雨乞岳から杉峠を越えて伸びる山並みも姿を見せていた。

 

 佐目峠〜イブネ〜クラシを辿って大峠〜銚子ケ口へと続く山々だろう。ここでは撮影だけにして出発だが、私達の行く手を遮っている若者が居た。青年が登山道(もっとも、あんまり人は通らない道だが・・)の真ん中で、女性を“だっこちゃん座り”させて寛いでいた。“どうしたものか”と立ち止まっていると、直ぐに私の気配に気が付き「済みませんでした」と平謝りだったのだが、日本コバの時の女性の“白いお尻”事件といい、今回の“だっこちゃん座り”事件といい、中高年には目に毒である。

 

【東雨乞岳〜三人山〜郡界尾根〜沢谷峠〜武平峠下ガードレール】

 

 さて、気を取り直して我々が採った下山のコースは、「鈴鹿の山風」さんの“いいないいなのコバ”である。「鈴鹿の山風」さんは登っている記録なのだが、今回はこれを降りる事とした。道は境界の杭を辿っているみたいで安心である。

 

 

 二次林の中へ続く踏み跡を辿ると、紅や黄の木々が待っていた。相棒の「一寸このへんで寝てみたいなあ〜」の言葉で昼休とした。11時過ぎである。

 

 再出発の後は、ジグザグをきりながらの下降だが、単独の男性が登ってきた。道を譲ろうとすると、彼の方が譲ってくれた。「どうも済みません」と挨拶すると「いや、ちょっと休みたいので・・」と正直な言葉で、そのさわやかな感じが私の耳に今も残っている。

 

 さて、道は鞍部を越えて登りとなった。登りきったところで、男女のペアがくぼ地の箇所を上がってきていた。ここが「鈴鹿の山風」さんが記す“いいないいなのコバ”の詰めの処だろう。私達は、三人山を目指して右手へと道をとった。

 

 三人山は、稜線にポツンと標識があるだけだった。ここは写真だけで、尾根筋を降りることとした。稜線は踏み跡も不明瞭で、倒木を跨いだり潜ったりの路が続く。アップダウンを繰り返して尾根は続いていた。

 

 

 

 

 やがて、シャクナゲや潅木の中を進むようになる。単独の男性が上がってきた。先ほどの中高年と違って、壮年の男性だった。二言・三言、言葉を交わして進むと、右手からの植林が尾根まで上がってきていた。左手前方に鎌ガ岳の雄姿が望む場所でシャッターを押し、暫く進むと尾根は右手へと曲がっていた。

 

 ここで、進路を左へととる。展望は利かないが、右手にはスカイラインがあり、左手は先頃利用した“クラ谷”を辿る路が、ある筈である。そこから暫くで、スカイラインと鎌ガ岳の展望台みたいな場所に出た。そこにはフェンスが張ってあった。相棒の「コーヒーにする?」の言葉で小休止である。12時半だった。

 

 

【鎌ガ岳と西鎌尾根及び南鎌尾根】

 

 

 鎌ガ岳の雄姿にも別れを告げて、腰を上げる。笹原を降りると峠風の場所だった。踏み跡が不明瞭な箇所ではテープを探す。暫く進むと木に“一ぷく峠”と書かれていた。派手にテープが巻かれていた。

 

 

 

 いきなり車の騒音が聞こえると思ったら、前方にスカイラインが飛び込んできた。そして、今日の山旅の終わる時を迎えた。ここからは、薄暗い植林の中を辿る。そして、小さな沢の上にガードレールがあった。

 

 

 ガードレールには、雨乞岳の登山口であると記されている。赤テープよりも目立たない、こんな所を登山口にしている山好きが、私は大好きである。もっとも、車を走らせているだけで発見できる人は居ないだろう。

 朝方の駐車場所には、スカイラインを40分ほどの歩きで、14時前に着いた。もちろん今日も私達は、温泉で汗を流しての、いつもの順路での帰宅である。

 

 

 紅葉の下での昼寝は、ほんの5,6分だったけど、ほんとうに気持ちがよかったじょ! あそこでテントを張ったら気持ちいいだろうな〜。今度は新緑の頃にでも今回と反対のコース(鈴鹿の山風さんのコース)で御在所岳まで行きたいね。