藪漕ぎの楽しみ

東温アルプスを辿る・・善神山【2011年9月10日(土)】

 大阪への転勤(2002年6月)から昨年6月に8年振りの古里へと落ち着いたのだが、この一年の間、この項への投稿するような山行が皆無である。めっきり山行形態の変化を余儀無くされている現在、それも仕方が無い。しかし、年数回の“藪漕ぎ日記”への書き込みになっても、この欄は残そうと思っている。   

 直近のこの項には

『私達の山行形態は、型どおりではない。自由気儘な山行計画を立ててきた。小屋泊りに限定しないで、テント泊での山行、また、当初からツェルト泊を計画する場合もある。晴れた日ばかりじゃなく、雨の日にも計画を中止することがない。時には、台風が南海上に迫っている最中(無謀)にも、山へ入った時もある。当初は、小さな花々に出会う事に喜びを見出していたのだが、近年は、相棒の趣味(撮影)が加わったこともあり、雨の日や雪の降る日の山歩きにもその趣を見出しているのが現状でもある。しかし、夫婦で共通しているのは、山の中にいる時間(その空間、その瞬間)が好きな事である。そこは、稜線の爽やかな風が通り抜ける場所であったり、森の中の陽が差し込まない場所であったり、小さな花々が咲き乱れる場所であったりするのである。私達の場合、ただ、山頂の三角点に触れて、降りてくるというような事のみに喜びを見い出してはいないし、そういう山行形態はとらないのである。 

【この事は、私達の現時点での“山へのスタンス”であって、何年か後には変わっているかも解らないし、他人の山行形態に“あれこれ”と口出しするつもりも無い。】』

の記述がある。その“山へのスタンス”とは別に、夫婦での年金生活への突入や、老親の介護の問題などなど、今までとは違う障害が新たに噴出するのも止む終えない。そんな、誰もが経験し乗り越えるハードルを越えて、私達も、山との付き合いをするのである。

 

 

 25,000図を別画面で開く  

 

白糸の滝上、林道登山口〜善神山〜1,253mピーク〜陣ヶ森〜白糸の滝上林道

 この記録は、リンク仲間の“おいわさん”が今春辿ったコースだ。前述のように、帰郷後、まともに山歩きが出来ていない中、皿ヶ嶺界隈だけは足繁く通っているのだが、その登山口の上林地区や井内地区を通る度に眼にする山容を足下にするのが今回の山行である。久し振りに25,000図を見ながらの山行となった。もちろん、“おいわさん”のカシミール図のプリントも持参している。

  

 我が街東温市の上林にある白糸の滝の看板のある場所で、林道は通行止めである。今春以降の雨で、林道が崩れているようだ。私の「ホウカイネェ」の呟きには、相棒は無視を決め込む。兎に角、白糸の滝駐車場に愛車を停め林道を歩く。直ぐ先に、下山してくるであろう踏み跡(登山道とは言い難い)を確認する。ここへ降り立つのが何時になるかは不明である。なにせ初めての路である。10分余りの林道歩きで崩壊箇所に出合う。 

  

 崩壊場所を乗り越えると、拝志川に架かるコンクリート橋の手前から川に沿って林道が続いている。林道を暫く歩くと、少し広くなった広場に着く。その先の丸太橋を渡ったところに「善神山」の標識が立っている。ここが登山道の入り口だ。20分余りの林道歩きだった。小休止をして丸太橋を通り、山道へと踏み出したのは10時過ぎだった。【A地点】

       

 今の時期、イバラが路を覆っている。そして、いきなりの“まむし”君の歓迎である。木の枝を拾って、足下と前方の蜘蛛の巣を払いながらの前進である。路は川の右岸に沿って続いているが、石積みの堰堤が何箇所も現れる。二つ目の丸太橋を渡ると、またしても“善神山”の標識が立っていた。その場所を通過したのは、10時半だった。

   

 路は、丸太橋を渡った辺りから左股へと上がっている。つまり、地図上の1094mピーク(ここが善神山と呼ぶ)直下から落ちる沢筋のようだ。やがて、前方が狭まって来て、岩がゴロゴロした箇所にロープが架かっている場所に遭う。

   

 林道終点から、歩き始めて50分。ここで小休止である。“おいわさん”のカシミール画像では、この先、左の尾根へと回り込むようになっている。地図を確認し現在位置を特定するのも、私が小休止の際に確認する仕事でもある。

   

 再出発後5分ほどで、標識に導かれて路は左折することとなる。【B地点】この箇所は、“おいわさん”のhpにて確認済みでもある。右手からの小沢を数ヶ所過ぎると、左前方に先程辿ってきた沢越しに陣ヶ森のアンテナが望まれる。その事が、今までの沢沿いの路とは違って、尾根筋へと変わっている事を示している。

    

 そして、植林されている良く踏まれている路の脇に石垣も積まれているのだった。この路は、植林か炭焼きの路なのだろうが、峠越えの路以外で石垣が積まれているのは、稀なことと思う。峠越えの路ならば、上林と井内からそれぞれ畑野川や直瀬へと路はある。また上林と井内への峠越えは、花山から黒岩、利山からは花山越えのルートがある。もっとも、今はどのルートも辿る人は居ない。歩いて、自らの足で山を越えるという奇特な者が皆無となった現代であるし、今はそんな必要も無い。

  

 尾根を回り込む形でトラバースを終えると、路は尾根筋を辿ることとなる。【C地点】路の真ん中でとぐろを巻く蛇は、私の足音に驚いて退散した。雨後の晴れた日には、ヘビには良く出会う。

  

 少し開けた箇所には、大きな松の木があった。ここまで、標識も整備されているし路もしっかりしている。善神山への主稜線まではあとわずかで、11時半だった。

  

 善神山への分岐である主尾根に到着したのは、12時に少し前だったが、ここでコンデジがストップ(ナンテコッタィ)である。【D地点】前善神の標識があるが、相棒は腰を降ろしたままである。私の経験する良くある事件の解決方法は、相棒の携帯写真で賄えるのだった。という事は、ここからの掲載写真はケータイの画像となる。

   

 前善神山の祠が祭られているピークへは、5分と掛からなかった。当然、右手には井内の集落が左手には上林の集落が垣間見える。という事は、両集落からこのピークが見えているという事だ。このように、背中あわせで祠が置かれているのは珍しいのではないのかどうかについて、私には判断の知識を持ち合わせない。

   

 撮影だけ終え、再び分岐へと戻る。12時前だが、直ぐに善神山へと出発である。と、5分程で左手へと標識がある。相棒は、先程と同様「あんた、行っといで」である。そして、ここも背中合わせに祠が祭られている。

    

 善神山から1253mピークまでの尾根は、快適に歩ける。ここらで相棒がガス欠。勾配が増した坂を上がれなくなったようだ。勿論、コンビニで調達したガスの補給で事なきを得るのである。再出発後、ロープの架かった箇所や痩せ尾根の個所などもあり、油断は出来ない。所々に垣間見える“しゃくなげ”は、来年の花の見頃はどうなんだろうか?と、期待に胸一杯である。

    

 

 赤テープや標識に導かれて、200mの高度を稼げば1253mピークであり、そこが“東温アルプス縦走路”なのだ。【E地点】一時間ほどの尾根歩きで分岐のピークに到着し腰を降ろす。13時過ぎだった。ここからは、先程までの尾根歩きとは違って、安心である。

  

 東温アルプス縦走路は、過去数度、訪れているのだが、大阪生活8年のブランクは記憶を曖昧にしている。その8年の間に“東温アルプス”と名付けられたのだった。しかし、そのお陰で路が整備されている。陣ガ森は、比較的同定が易しい山である。もっとも、山自体は容易にアクセス可能なのは、上林峠を貫く林道が延びたせいではあるが・・。林道のトンネルが抜ける前は、“上畑野川”からの林道をアクセス道路として使うか、上林からの峠路を使うしかなかった。

  

 陣ガ森の脇を通る縦走路を上林峠へととる。14時前に通過。“おいわさん”の記録では、ここから上林峠との間に分岐があるように記述している。その尾根は、25,000図でも確認できる顕著なものだった。暫く歩いて行くと、笹の中に何か人工物が据えられていた。“白糸の滝”分岐までは、10分ほどで着いた。立派な案内板が設置されている。この先の行程が約束されたようで、安心である。【F地点】

  

   

 白糸の滝への分岐からの路は、以外にも顕著だった。暫く降りると、やがて植林の中へと導かれる。少しだけ視界が開ける場所がある。右手には、峪越えに前善神と善神山の稜線が垣間見える。また、左手には、赤柴峠方面を僅かに覗くことが出来る。そして、一時間ほどの降りで、“ツガ”の大木の場所へ到着なのだ。ここで、相棒の三脚のお出ましである。【G地点】高度は、900mを切っている。 

   

 

つぶやき

 先日、「上林の風穴までの林道でシカを見た」との情報を得た。そんなバカなぁ〜と、相棒と言っていたのだが・・。その後、上林・花山地区の猟師の人と話す機会があったので、その事を話題にすると「前から“山の内”にはシカがおった。横河原の橋あたりで4〜5頭走っとったと聞いた事もある。シカは、夜行性なんで夜にウロチョロしとる」との事で、皿ヶ嶺界隈に出没してもおかしくは無いとの結論だった。相棒は「困った事になったなぁ〜」と言っているが、この山域の笹が食べつくされるようになるには、何年もかかるだろうし、ここ数年で被害が出る程急激に増殖されるものとは考えられない。しかし、このような情報については行政も把握しておく必要があるものと考える。なお、御当地・東温市では害獣駆除(現在は野猿・猪などの駆除を実施中)も行っているが、今現在は、シカは対象外のようだ。

 何故、敢えてシカの話題になるのかについては、当サイトの『一の森ヒュッテ』欄をご覧の方は御承知頂いているとおり、シカ被害の恐ろしさを経験しているからに他ならない。また、敢えてこんな情報を流すのかについては「知りえた人が、情報を発信すべき」であり、自分自身に直接関係ない事でも「情報を流す」べく努力する・・これが、私の一貫したスタンスでもある。

  

 撮影は20分ほどで終了した。どこの山域もそうだが、稜線沿いは植林のための伐採がされなくて、元の植生が残されている場合が多い。何本も残されている大木の一つに、根元に斧(鉞か?)の跡を残してなお生きている大木があった。斧を何回か振るって後「この木を残そう」とした理由は、一体何だったのだろう。撮影を終えて再出発後、20分ばかりで通行禁止の立て看板には「危険 直進すると滝の上です」記述がある。

     

 間伐などの手入れをされていない植林は薄暗いが、植林の中へ陽が射している路を歩くのは良い。今日の様な残暑の中、汗をかきながらも清々しい山歩きが出来る幸せは、何物にも替え難いものである。通行禁止の看板から20分ほどで朝方の林道に降り立った。【H地点】 林道のその場所は、予想通り白糸の滝駐車場へは眼と鼻の先の場所だった。滝の遊歩道脇でコーヒを沸かし、今日の山行の余韻に浸りながら帰宅の途に着いた。

 


 また今回も、電池切れとなったんじょ。わいわいさんは、前に出掛けて次に出掛けるまで、なんの準備もしないんだからしかたないわね〜。だいたい、暑い時期に行く所ではなかったわね。いきなり藪になり、ヘビが出てきたりするから・・・。それも始めのうちだけで、あとの道は問題なかったんだけど、尾根道はきついわ〜!! 軽い方とはいえ、三脚を背負っていたもんで大木を写す気持ちになり一枚でも写したからいいもんの、写すものがなかったら疲れも倍増じょ。東温アルプスの縦走路に出た時には、高速道路並みの歩き良さ♪ 整備して下さった方々に感謝〜 <(_ _)>