「紅茶をお持ち致しました」
「あ、そこ置いておいて」

自室の椅子に腰掛けた無防備な背中にいたずら心が沸いた。

「なに…ん、んー!」

身を屈め、何事かと顔を上げた玲樹さまの顎を捕らえた。
軽く開いた唇を無理矢理塞ぐ。
漏れ掛けた息をも飲み込むように、角度を変えて何度も口付ける。
最初は押し退けようとしていた玲樹さまの手が、 やがて力なく私の腕を掴んだ。

「……このまま押し倒したいですね」

唇を首筋へと移動させながら、小さく呟いた。
途端にビクッと揺れる肩に、クスクスと笑みが零れる。

「しませんよ。…紅茶が冷めてしまいますから」

そう囁いて名残惜しげに体を離した。
もっと警戒心を持たないといけませんよ、とただそれだけのいたずらだったのに、 思うより自制心を試されることになった気がした。




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貴方は、けして私に気を許してはいけない。




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