「……は?」
思わず聞き返してしまった。

「ですから、キスしてもいいですか?」

アキシロは、焦れたように問い直してくる。
…いやいや、声はちゃんと聞こえてたよ?じゃなくて、その内容が問題じゃない?
玲樹が回らない頭でそんなことを考えていると、もう言葉での問い掛けは諦めたと 言わんばかりに、腕を捕まれた。

少しひんやりとした、柔らかい感触が唇に触れ、すぐに離れる。

「…眼鏡が邪魔ですねぇ」
「なななななにしてるんだよ!ちょっと気持ち悪い!!」
玲樹は捕まれていない方の手で、思い切り唇をごしごしと擦った。
頬が熱い。多分赤くなっている。いや、ゆでだこのように真っ赤だ。
「そんなに擦ったら、傷が出来ますよ?」
心外そうにそう言ったアキシロの顔が、もう一度近付いて来て、玲樹は思わず瞳を瞑った。

ぺロリ、

と下唇を舐められて、ひゃっ!と妙な声が上がる。

「お大事に」


掴んでいた腕を放して、スタスタと歩み去るアキシロを見送りながら、 玲樹はうちの執事はどうしてしまったのだろうとぼんやり思った。




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頬を抓れば、全部夢だったりするのかも。




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