おぼろ月夜

菜の花畑に、入り日うすれ、みわたす山のほ、霞ぶかし、
春風そよぐ、空を見れば、夕月かかりて匂いあまし

春の夕暮れ時を歌った抒情詩の代表ですね。作詞は、高野辰之という方で、長野県で教鞭をとっておられたとされています。ある本によりますと、彼は週末に、学校の仕事を終えると、約40km離れた、地元の生家に歩いて帰り、一晩生家で寝た後、翌朝、また同じ40kmの道のりを学校に向かって歩いていったと書かれています。つまり、週末は、学校を午後1時すぎに出発したとして、生家につくのは暗くなるころ、また翌日は朝9時に出たとして、学校にもどるのは、夕方ごろということになります。彼は、この道のりの途中で、春の美しい風景に幾度となく出会い、それを、この「おぼろ月夜」として、読んだとされています.





40kmといいますと、だいたい名古屋ー岐阜間で、
車などない昔は、これを普通に歩いた訳ですね。
やはり、このくらい足を使って歩行していた時代には、「糖尿病」はほとんどなかったのでしょうね。
すこし、見習わないといけませんね。
この道程で、歩きながら眺めた春の景色は、おそらく、たとえようもなく感動的で、行き交う小鳥のさえずり、静かに流れゆく川の音、そしてあたり一面を、「黄色一色」にそめる菜の花の群れ、霞たなびく遠くの空に、夕月がそっと寄り添うように見えた、ということなのでしょう。
自然はどれも全て美しい、どんな小さなものでも、どこからでも、春になるとこのように芽生え、あたり一面を明るく照らす。そんなことを考えながら、彼は歩いたのでしょう。
「おぼろ月夜」は、日本の春の情景を美しく音楽にしたようなもので、この歌を聞いただけで、ゆっくりとながれる夕暮れのひとときを、心に描くことができます。疲れた時に、ふと、この歌を聞いたとき、今まで忘れかけていた、日本的情緒がよみがえるように。


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