黄色ブドウ球菌による食中毒について

今回、黄色ブドウ球菌の産生する毒素による食中毒が社会的に大きな問題となっていますが、ここでは、この黄色ブドウ球菌とは、どのようなものなのか解説してみましょう。

もともと、黄色ブドウ球菌とは、私たちのからだのまわりに存在する細菌で、私たちのからだに、いろんな病原性をもっています。たとえば、毛穴からバイキンがはいって膿む(うむ)場合、この原因菌が黄色ブドウ球菌であることはよくありますし、高熱と咳(せき)で入院した患者さんの痰(たん)からこの黄色ブドウ球菌が検出されることもたびたびです。黄色ブドウ球菌は、このようにいろいろな疾患の原因菌としても重要ですが、破傷風菌のように毒素を産生することは、あまり一般には知られていません。今回、注目されるのは、この菌の毒素による食中毒です。黄色ブドウ球菌が産生する毒素は大別して3つあり、それぞれ小児の炎症性の皮膚炎、急性のショック、食中毒に関係があります。このうち、食中毒に関係する毒素はエンテロトキシンと呼ばれ、分子量約3万の単鎖型のタンパクで、この毒素が体内(消化管)にはいってから、通常2〜3時間で、(Hurstの内科学によれば、2から8時間で)嘔吐、下痢がおきるとされています。食中毒の分野では、このように食後わずかの時間内に症状が出るのが1つの特徴とされ、「食べてすぐに症状がでたら黄色ブドウ球菌によるものだと思え」とまでいわれます。もうひとつ、この黄色ブドウ球菌の毒素を語るうえで無視できない特徴は、この毒素が熱に耐性があることで、ある検討では、100℃60分の加熱処理でも分解されなかったとされています。すなわち、黄色ブドウ球菌に汚染された食品が熱処理されても、このなかの黄色ブドウ球菌は熱により死滅しますが、このなかで産生された毒素は分解されないわけで、最悪の場合では、加熱食品でも食中毒が発生することになります。今回のエピソ−ドも多少なりともこのことが反映されている可能性があります。

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