夕焼けの時

                                       絵と文:都筑信介

                                   (本作品はフィクションであり、登場人物等の名称はすべて仮名であり、実在しません。)

秋のある日、章夫さんと敦子さんは、エマをつれて、川岸へと散歩に出かけました。秋のそよ風が心地よく、自然と足が軽快にでて、時間のたつのも気にもせず、
どんどん歩いていったら、もう河口近くまできてしまいました。もう夕焼けです。赤いおおきな夕日が、地平線(スカイライン)に沈んでゆきます。



「大きな夕日だわ、ゆっくりと、地平線(スカイライン)に沈んでいくわね。」
「そうだね、こういう情景は、今も昔も変わらないなあ、」
「そうよね、古くから、デートのシーンとしては、最高の場面よね?」
「そうなんだ、昔は、ハードトップの愛車に、彼女を乗せて、ドライブして、海岸に車をつけて、今のような夕日を二人で眺めるのが、最高のシーンでね。」
「そうね、この時は、二人には、まるで時間が止まったように感じがしてね、きれいね!と彼女がいうと、きみのほうがもっときれいだ!と」
「その歌の歌詞にも、でかけよう、今が通り過ぎてゆくまえに、とあって、今が一番いいときだ、あとで後悔にないように、今を楽しむんだと」
「となりの猫田さんたちは、ちょうどそんなシーンみたいよ。エマちゃんが面白そうにみてるわ!」



夕日が沈んでから、川岸をあるいて帰るころ、西の対岸には、きれいな夕焼けがみえました。
「すこしずつ、紫色の星空に変わってゆく前のコントラストが絶妙ね。」
「そうだね、ほんの5~6分で夜空になるんだけど、この情景もすばらしい!」
「普段はいそがしくて、こういうシーンをみることは意外にすくないものね?」
「そうだね、考えてみれば、もったいない話だね」
そんな話をしていたら、まわりはすぐに暗くなってきました。



「もう、夜だね、これからは、虫たちの登場だね」
「そうね、蟋蟀(こおろぎ)が早くも、ぎぎぎ、って鳴きだした。これからは、僕たちの出番だって」
こうやって、夜はゆっくりとながれてゆきます


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