夕暮れ時
                                                      絵と文:都筑信介

                  (本作品はフィクションであり、登場人物等の名称はすべて仮名であり、実在しません。)

ある秋の日の夕暮れ時の1シーンです。暑い夏がやっと終わり、夕暮れ時に、そよ風に吹かれながら歩いていくと、トンボの群れが、秋の夕日に映えるように、飛び交っていました。



♬ 夕焼け小焼けの赤とんぼ~
  おわれてみたのは、いつの日か

♪ 山の畑の桑の実を~
  小籠につんだは、まぼろしか

「今年も、こうやって秋の風景をみることになったなあ」
「この秋のシーンには、この歌が合うわね。」
「うん、作詞者の三木露風も、こうやって、トンボの飛び交う姿をみて、同じことを考えたのだろうね。」
「そうね、思い描く人は、三木露風は母親、章夫さんは、アンナでそれぞれ違うけど、不思議と心情には合うわね」
「そうだね、別れたひと(イヌ)を思う心が、自然と、この風景のなかに流れているようだからね。」
「すこし涼しくなって、そよ風が、こうやって秋の挨拶のように吹いてくれるのは、なによりのプレゼントよ。」
「そうだな、今年も、アンナとこの風の中で、歩きたかった。」
「でも、風たちが、アンナからのメッセージを天から送ってくれているわよ、「わたしも一緒よ」って、」
「そうだな、ほんとうにそう言ってるみたいだ。」

しばらく歩くと、久しぶりに変わったカップルに会いました。



「あれ、ひょっとして、猫田さんじゃないの?」
「そうだな、かわいい彼女連れているぞ。」
「いつの間に、彼女ができたのかしらね」
「まあ、そっとしておこう」



「この道は、よくアンナと歩いた。思い出がよみがえるなあ」 

  なぜ、君は、こんなに早くいってしまったんだ
  もっと、もっと、君と歩きたかったのに
  もっと、もっと、君と語りあえたかったのに

  なぜ、君は、僕から去ってしまったんだ
  もっと、もっと君においしいと笑ってほしかったのに
  もっと、もっとおかわりがほしいと言ってほしかったのに

  君がいなくなってから、心の中は、からっぽのままだ、
  そして、何も、それを代わりに満たすことはできない
  なにをしていても、君のことを思い出す
  そして、ずっとこのままだろう。

「これを、歌にできたら、最高ね。一応、詩として、韻をふんでるし、、」
「そうだな、こうやって、陽が暮れていく。」


                              もとのページにもどる