秋は風色

                                              絵と文:都筑信介

                              (本作品はフィクションであり、登場人物等の名称はすべて仮名であり、実在しません。) 


まだ、日中は暑いのですが、9月になり、朝夕は少し、肌に涼しいそよ風が舞うようになりました。章夫さんは久しぶりに、敦子さんを誘って、秋の散歩をしてみることにしました。陽ざしはまだまだ強いのですが、公園の森の中に入ると、すこし涼しい風が、木の間をすすりぬけ、そっと顔に流れています。でも、何かがいつもと違います。
そうです、アンナがいないのです。



秋は風色
すこし伸びたススキの穂
遠くより聞こえてくる蟋蟀(こおろぎ)の音(ね)
いっしょに歩いた時と同じ音

秋は風色
ほんのり黄色い葉をつけた木が
湖面にさかさにゆれている
いっしょに歩いた時と同じ風

秋は風色
茶色がかった黄色い葉が
地にいっぱい落ちている
いっしょに歩いた時と同じ色

秋は風色
すこし古ぼけた木のベンチ
落ち葉の上にひっそりと
いっしょに歩いた時と同じ場所



「そうねえ、何も変わっていないののよね、あの時と」
「そうなんだ、だだ、変わったのは、アンナがいないことだけだが、、」
「イギリスのロックバンドにも、こんな詩があるんだ。」

もう陽が永遠に輝くことはないだろう。
もう月が空に昇ることはないだろう。
愛する君がいなくなったしまったから
孤独という服に身を包み、群青の世界に入り、
眼は涙で曇ったままだ


「こういう感情は、外国でもいっしょなのね、むしろ、そういう歌は多いのかも」
「そうだな、いろんな歌を聞くと、それは、そういう気持ちなのだと、あらためて感じることが多くなったなあ。」
「そうね、目の前の風景は何も変わっていないのにね」
「そうやって、秋は、毎年やってくる。」
                                       
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