おたふくかぜ(ムンプス)
 
小児のあごの下に位置する唾液腺の炎症をきたすウイルス感染症で、おたふくかぜ(お多福:平安時代の美人像で、両側の頬(ほお)がふっくらしている顔のこと)と、よばれています。主に幼児から学童にみられますが、大人でもまれにみられることがあります。

医学書によりますと、潜伏期(ウイルスに暴露してから発症するまでの時間)は、約14日で、約67%は両側の耳下腺(耳の下にある最大の唾液腺のこと)がはれますが、正確には、左右同時にはれるわけではなく、通常、右か左いずれかの唾液腺が左の絵のようにはれ、2〜3日してから、もう片方の耳下腺がはれるようなパターンが多いように思います。お子さんが来院されるのは、ちょうど絵のような時期(stage)が多く、「かむといたい」「なにか、頬がはれている」「微熱がある」などの症状が主です。ウイルスに暴露しても、必ず発病するというわけではありません。10人の児童に、このウイルスが感染しても、約3人は発病せず、免疫だけがつきます。(これを、不顕性感染といいます)


   みかけは、絵のようにみえていても、おたふくかぜ以外にも、このように頬がはれてみえる病気があります。たとえば、「虫歯」があって、そこから炎症が広がった場合や、副鼻腔炎(いわゆる、蓄膿症(ちくのうしょう)で、鼻だけでなく頬まではれてしまった場合、また、のどの扁桃腺があまりにはれて扁桃周囲炎という病気になってしまった場合なども、このように、頬がはれてみえますので、自分で判断せず、きちんと診察をうけましょう。


  おたふくかぜ、かどうかは、血液検査で、耳下腺(唾液腺)からでる酵素の値を調べることによって、ある程度は科学的に調べることが可能です。本院では、午前中に検査をしていただくと、夕には結果をみることができますので、まず受診をしてください。

  通常は、適切なおくすりを内服していただきますと、約7日で、はれは軽快してきます。
まれに、髄膜炎などをおこすことがありますが、経過は良好なことが多く、数日の通院で軽快します。
公的ワクチンではありませんが、ワクチンがあり、接種されると発病を阻止できます。成人で、この病気にかかると、精巣や卵巣をいためるため、低頻度ながら不妊の原因の1つになり得ると考えられています。
したがって、中学生ころまでにかからなかった子供さんは、ワクチンを接種したほうが無難のように思います。

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