口唇舌異常運動症
この病気は,加齢とともに増加し、80歳以上の人では、かなり高率で、みられるとも報告もあります。あたかも、チュ-インガムをかむような連続性の運動で、見かけ上は、なにかをかんでいるようにみえます。正確には、口元のみでなく、舌も連続的に運動していることが多く、神経内科を初診してくる主訴のなかでも、頻度の高いものの1つです。
神経内科では、この病気はおおまかに、2つに分類されて解説されます。1つは、精神神経科やメンタルクリニック等で、処方された薬をのんで、しばらくしてから、口がもぐもぐ動くようになったようなケースで、もう1つは、そういう既往や病歴のないひとに突然生じるようになったタイプです。
その他、脳炎や髄膜炎を起こした後や、外傷や脳腫瘍で脳が障害をうけたときや、肝臓が悪いときなどに生じることがあります。
このような症状をもつ人を、いろいろしらべてみると、脳とくに、脳の前のほうに、脳血流の低下や、脳梗塞がみつかることが、比較的多く、脳の循環が動脈硬化などにより、悪くなったためだろうという仮説が、現在でも有力です。
このような患者さんの脳CTとへリカルCTでみた検査結果をすこし紹介しますと、

左が脳CT画像で、右が脳の血流をしめすへリカルCTという画像です。
矢印で示すように、この患者さんは、脳の尾状核という前方の部分に多数の小梗塞巣があり、
右の脳血流画像でも脳の前の部分(画面の上の方)が黒く、血の巡りが悪いことがわかります。
このように、口唇舌異常運動症の患者さんでは、本人が気が付いていなくても、検査をすると、脳に梗塞があることが多く、このようにみてきますと、「このごろ、口をもぐもぐやるようになったなあ」というただ単純なことではなく、脳の中に「はたらきの悪い部分」がでたと考えたほうが妥当とおもいます。
治療
「もう直らない」と、半ばあきらめている方が多いのですが、この病気に効く薬は、ちゃんとあることは意外としられていません。ただ、どこにいっても、このような治療がうけられるわけではなく、きちんと神経内科の専門医に相談しましょう。薬の投薬量はかなり個人差があり、これも治療効果を定期的に見て、量や、のみかたをきめていく必要があります。これも、本院のような神経内科専門医にきちんと相談されたほうが無難です。

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