筋萎縮性側索硬化症
 (英語ではALS: Amyotrophic Lateral Sclerosisといいます)
はじめは、少し、手足の筋肉の力が衰えたかな?とおもえる程度ですが、しだいに喉の動きも悪くなり、やがて全身の筋肉の萎縮と筋力低下をきたす予後不良の病気です。
進行したケースでは、目玉(眼球)を動かす運動神経のみが残り、他の運動神経、つまり手足の随意運動がほとんど不可能となってしまう病気です。大まかに、口とのどの周囲が最初におかされて、ものが飲み込みにくくなるタイプ(球麻痺型という)、と全身の先端部の筋肉がおかされて早くから運動障害をきたすタイプと2種類がありますが、本質的には、大きな違いはないとされています。
愛知医科大学加齢医科学研究所の吉田真理先生から御提供いただいた脊髄の写真をみて、これがどんな病気かをみてみましょう。
まづ、正常の脊髄です。

脊髄は断面にすると、こんなふうに、楕円のなかに「H」があるようなかたちになります。この「H」以外の濃く染色されている部分は、いわば「光ファイバーのネットワーク」のような神経の束(たば)ですね。
さて、次に筋萎縮性側索硬化症の患者さんの脊髄をみてみると、

このように、神経の束が破壊されてしまっています。
どうして、こんなになってしまうのだろうか?と思う人も多いだろうけど、研究はされていますが、あまり原因については、よくわかっていません。最近、家族性のALSで、認知症の1つである前頭側頭葉変性症(FTLD)の脳に異常蓄積しているTDP−43というタンパクが、この家族性ALSで増加していることがわかってきました。このあたりからこの病気の解明が進む可能性があります。
このように脊髄については、かなり高度におかされるのだが、、大脳はほとんどおかされず、その機能は全く正常で、患者さんは、人のしゃべったことも、ちゃんと理解できるし、数学の問題も解ける。でも、進行した場合は、まったく自分の力で手足をうごかすこともできず、運動機能だけが麻痺してしまう。そして、呼吸すらも自分でできなくなってしまう。
でも、呼吸をレスピレーターで補助したり、まぶたの「ウインク」で話ができるようにしてあげれば、全く普通の人とおなじように、お話もできるし、生活可能です。。もし、筋萎縮性側索硬化症の患者さんと接することがあれば、このことをよく理解して接するようにしましょう。
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