クロイツフェルトーヤコブ病

この病気は、近年、狂牛病との関連で話題になりました。この病気はわかりやすくかけば、人間の脳の中に、プリオンとよばれる異常なタンパク質が大量に蓄積するために、脳の正常な機能が破壊され、やがては死に至るという病気です。プリオンは、必ずしも悪玉ではなく、正常なヒトにもプリオンは存在します。正常プリオンは、不用になると、酵素によって加水分解され、蓄積したりしません。ところが、異常なプリオンは、容易に加水分解されず、脳に蓄積するためこのような病気が発生すると考えられています。異常プリオンは、感染性があり、つまり、異常プリオンがはいった食物をとったり、脳の硬膜を移植したりすると、
正常なヒトでも、異常プリオンが異常に増加し、この病気が発生することがあるといわれています。これまでは、羊のプリオン病の存在が知られており、プリオン病に感染した羊の脳や神経、脊髄、骨髄などを、羊がたべると、感染するが、羊のプリオン病は「種の壁」があって、牛には感染しないと考えられていました。
しかし、ヨーロッパで、羊の肉や骨などを食べた牛が、この異常プリオン病、つまり狂牛病を発症してからは、この異常プリオン病は、
「種の壁」を越えて、羊から牛に感染したことになり、さらに牛の異常プリオンが、ヒトの異常プリオン病、をも引き起こす可能性があるわけです。狂牛病については、まだ未解決、未知の点も数多く、ここではこれ以上触れませんが、ヒトのプリオン病であるクロイツフェルトヤコブ病について、すこしお話しましょう。いままでに、日本で報告されているクロイツフェルトヤコブ病は、おもに高齢者に多く、はじめは、痴呆症状や精神症状で発症し、しだいに自発性がなくなり、ベッドでねたきりとなり、1分間に数回、からだが「ピクン、ピクン」と痙攣するようになり、やがては意識の不明瞭となる病気です。愛知医大加齢医科学研究所の吉田真理先生よりいただいた脳の病理写真をみて、この病気についてみていきましょう。
         
大脳の断面を弱拡大でみたところですが、ところどころ「赤み」がぬけているのが、おわかりいただけますか?このようにクロイツフェルトヤコブ病は別名「海綿状脳症」といって、大脳が、穴だらけになって、「カスカス」になってしまう病気なのです。もうすこし拡大しますと、
        

このように穴がいっぱい大脳にできていることがわかります。この穴の中には大量の異常タンパク(つまり、異常プリオン)が存在していたわけです。このように、脳が穴だらけになるため、脳の重量はどんどん低下し、1000g以下の軽い脳になってしまいます。このように、この病気は大変衝撃的なものなのですが、幸い現在のところは、発生頻度はさほど高くなく、今後新型のクロイツフェルトヤコブ病がでないことを期待しましょう。

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