パーキンソン病
最近、この病気の名前をきく機会が多くなっています。10年ほど前までは、この病気は、人口10万人に対し、70〜80人程度でしたが、最近の検討では、人口10万に対し、120〜160くらいの有病率があるとされています。
日本は、かつてどこの国の経験したことのない高度の高齢化社会に進んでおり、今後もこのような病気は増加するだろうとされています。もっとも、この病気は、すでに19世紀後半に存在していたようで、この病気を最初に記載したのは、イギリス人ジェームス・パーキンソンであったとされています。
その特徴は、Shaking Palsyすなわち、手がふるえて麻痺状になることで、
これはパーキンソン病の初発症状として、今日も重要視されています。
パーキンソン病の特徴や症候について、一般向けに解説してみることにしましょう。
パーキンソン病の患者は、まず、姿勢は前かがみで(前傾姿勢)、歩こうしても、スッと足が出ないのです。通常、私たちが歩くときは、無意識のうちにも、左右の手を交互に振っておりますが、パーキンソン病の患者は絵のように手を振らず、このような独特の姿勢と、手の形を呈します。そして、歩き出しても、歩行速度は非常にゆっくりで、特に方向転換の際に、その動きがあたかも凍りついたよう(freeze)に動きが止まってしまいます。そして、再度歩行を再開しようとしても、思うように足がでず、歩行が開始されないまま、その場に立ち止まるといった症状がでます。手には、規則性のある「ふるえ」がみられ、動作中よりも、なにもしていないとき、すなわち静止時や安静時にむしろこの「ふるえ」は多いのです。通常、手の震えは、初発症状であることが多く、左右いずれかの「手」に見られ、その後両側にひろがることが多いようです。顔面も無表情、仮面様となり、通常のほほえむような笑みが少なくなります。手足とくに、肩や腰に近い部分の筋肉の硬さがめだつようになり、やけに体が硬くなったといって、整形外科へ相談にいくケースも決してまれではありません。
パーキンソン病の初発症状は大きく4つあり、
1.手足のふるえ
2.手足を動かすときの硬さ
3.体がスムーズに動かず、動きが止まってしまう
4、姿勢を安定的に保持できない(姿勢反射障害、倒れやすい)
ということです。ふるえは、通常、左右どちらかの手におきることが多く、何かをこねるような、規則性のある震えで、比較的ゆっくりです。からだがスムーズに移動できない、とか最初の第1歩がでにくい、あるいは、からだがあたかも鉛のように硬くなることが特徴です。だんだん病気が進行すると、体が前かがみとなり(前傾姿勢)、横断歩道で信号が青になっても、スッと出ず(すくみ足)、からだの動きがゆっくりとなり(動作緩慢)、だんだん日常生活に支障がでます。表情も硬くなり、いわゆる自然な笑い顔がみられなくなります。
最近、このような運動障害を呈する前に、嗅覚障害(匂いがわからなくなる、嗅球という部位の障害)、不眠(脳幹部や視床下部の障害)など、や感情面や認知機能での症状が、先行していることや、交感神経などの自律神経系も侵すことが判明し、パーキンソン病を全身病ととらえる「疾患概念」が主流です。
こんな症状をおもちの方は、まず本院で相談してください。
どうして、このような病気になるの?
よい質問ですが、正直なところまだ正確な原因はわかっていません。
ただ、先進国に多く、日本人よりも欧米の白人のほうが高頻度です。産業革命以降に多くなったとの見解もあり、ある特殊な薬や化学物質に暴露すると、パーキンソン病類似の病態になることから、中毒説も有力です。
健常人では、ドーパミンという物質が脳の「中脳」といわれるところで作られて、
これが脳の基底核というところで働き、手足のスムーズな動きをコントロールしているとされており、パーキンソン病の患者では、このドーパミンが枯渇していることまでは解明されています。
また、脳炎や頭のけが、などで脳の機能がいちじるしく障害をうけたときにも、
このようなパーキンソン病類似の病気になることがあります。
治療
まづ、パーキンソン病であるのか?そうでないのか?がもっとも大切なところです。
ある種の胃腸薬を長期にわたり投与すると、パーキンソン病類似の症状がでることがあるとされています。MIBG心シンチグラフィーという検査で、パーキンソン病の患者では、心臓の交感神経にこれの取り込みがないとされていますので、これと脳血流画像や、PETで、総合的に判断されることが大切です。
パーキンソン病の治療薬のうち、基本的なものは、L−ドーパ剤、抗コリン剤などですが、近年は
、他の系統のいろんな薬が、症状にあわせて処方されており、詳しくは神経内科の医師に相談されるほうが無難です。薬の量や、飲む時間も個人で異なり、その様式は、他の内科疾患と比べてかなり特殊です。また薬を急に中断したりすると、一時的な症状の悪化のみでなく、急激な全身状態の悪化などが起きることがあり、きちんと神経内科医師の指導のもとでおこなわないと、入院が必要になることもあります。
大事なことは、症状を改善させたりするには、一定の時間と検査が必要で、よく神経内科の先生とお話をして、治療を開始しましょう。
もどる