すなおな心

                                                       絵と文:都筑信介

                         (本作品はフィクションであり、登場人物等の名称はすべて仮名であり、実在しません。)

節分が近づくある冬の日、章夫さんの家から、3軒めの家の朝の1シーンです。



「こころ、今日は寒いからてが冷えるわよ。お母さんがこないだ編んだ手袋をしていきなさい。」
「やだよ、みんなは、マスコットの○○〇ちゃんの手袋をしてくるんだから、そんなのいや!」
「そんなこと言わずに、はめてゆきなさい、手が冷えるわよ」
「やだよ」
結局、こころちゃんは、お母さんの手袋をせずに、学校にいってしまいました。
すべてが、こんな感じです。お母さんは、途方にくれるというか、なんでこんな風になるの、というか、どうにもならないいらだたしさでいっぱいで、家事も手につかないようでした。



節分の日、朧子さんのお寺では、鬼を追い出すための、「豆まき」が行われていました。みんな、「福はうち、鬼はそと!」
と、逃げる鬼めがけて、豆を投げていました。
しかし、こころちゃんは、豆を投げません。
朧子さんは、「こころちゃん、鬼を追い出さないと、鬼がくるわよ?」
「関係ないもん、どうせ、うちには、鬼はいないもん、」
朧子さんは、お母さんから、最近、こころちゃんが反抗的で、なんでも嫌だといって、ちっともすなおでない、と聞いていたので、
「そうかしらね、目の前の鬼はいなくても、鬼は、すなおでない、ひねくれた子が大好きで、こころちゃんの心の中に住みつくかもよ?」
「そんなの嘘だい!」
「いいえ、いったん、鬼が心のなかに入って住みつくと、ずーとそのままいて、悪いことばかりやれ、ていうのよ。そうなったら、もう、おばさんも救ってあげられないわ。」
「へん、」

その夜、こころちゃんは、とても「怖い夢」をみました。



それは、みんなに意地悪なことばかりして、人のいうことを聞かずに、やっていたら、頭に鬼のような角がはえてきて、みんなが「わ-、やっぱり鬼の子だったんだ~」
そして、だれもくちをきいてくれなくなり、ずーと独りぼっちになった夢でした。
そして、いろんな鬼がいっぱいきて、悪いことしようとか、もっともっと意地悪くなれ-といってくるのです。仲のよかったお友達もみんな逃げていってしまいます。」
「そんなのいやだ~、」その時、ひとこと「お母さん、助けて~」と叫びました。
「どうしたの?」
気が付いたら、夜中に大声を出したので、お母さんがきてくれていたのでした。
「あ母さん。」
「なにか、怖い夢をみたのね。もう心配ないわよ、お母さんがここにいるから」



この日以来、こころちゃんは、おかあさんのいうことを、すなおに聞くようになりました。
「きょうは、昼から、雨が降るから、折り畳みの傘傘をもっていきなさい」
「はい。」
どうも、こころちゃんの心の中にいた鬼は、お母さんに追い出されたようです。


どうでしたか?みなさんも、過去には、もっと「すなおに」なっておけばよかった、なんて思い出はありませんか?
今からでも、決して遅くはありませんよ、いろんなことに「すなお」になってみましょう。そうすると、きっと、鬼が去り、福がきますから、

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