年の暮れ 

                                       絵と文:都筑信介

                                   (本作品はフィクションであり、登場人物等の名称はすべて仮名であり、実在しません。)

章夫さんは、アンナちゃんと二人暮らし(?)です。もう今年も暮となり、木の葉は落ち、すこし冷たい風が、夕暮れになると肌にしみる季節です。
裏庭にでてみると、先日、木陰に置いておいたおもちゃの家に、ふとみると、ネズミが中から顔をだしていました。




「なるほど、ネズミさんが、ここに引っ越してきたんだな。」
ということで、章夫さんは、お昼にふかしたあった「さつま芋」をその前においてやりました。
ネズミさんは、声はださないけれど、なにか「きょとん」とした眼で、こちらを見つめていました。
そして、遠くでよく見えないけれど、なんとなく、うれしそうな顔をしていました。



その夜、静まり返った寝床に、何か「ひそひそ」という話し声が聞こえてきました。章夫さんは、ふと、眼を覚まし、裏庭側の障子のほうをみると、
ネズミが2匹、障子の前で、「お話」をしていました。
「そろそろ、ネズミデパートに、お歳暮の品を決めて連絡せないかん (しないといけませんね:名古屋弁)」、
「そうだわな、ここのご主人には、いろいろ世話になっとるし、こないだも(先日も:名古屋弁)、おいしい焼き芋もらったばっかしだでね!(もらったばかりだから:名古屋弁)」
「なんにしとこう?(何にしましょうかね?:名古屋弁)」
「ここに、「なんでも好きなもん」というというギフトがのっとるぞ、これにしたらどうだ?」
「そんなら、それにしとこか(それなら、それにしておきましょうか?:名古屋弁)」



次の日、障子をあけてみると、廊下に硯(すずり)と墨、そして筆が置いてありました。そして、それをおもしにして、1枚の紙がはさんでありました。
章夫さんがその紙をとってみてみると、次のような文が書かれておりました。
「この墨をすって、付いている筆で、お好きなものを、この紙に書いて、また硯の下においてください、数日で希望の品が届きます。」
「ほう、これはすごい、さっそくかいてみよう。」



数日後、障子をあけてみると、書いた通り、大きな米俵が届いていました。びっくりした章夫さんは、敦子さんに連絡して、一緒に見てみました。
ほんとの米俵だわ、中においしいお米がいっぱい入っているんじゃない?」
ネズミさんからのプレゼントだね。


どうですか?昔から、ネズミさんは「富、幸せ」を語るときに、ときどき登場しますね。そんな、ことを考えていたら、こんな話になりました。
来年は、こんないい話が現実になるといいですね



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