アゲハ蝶とバッタくん

                                絵と文:都筑信介

                             本作品はフィクションであり、登場人物等の名称はすべて仮名であり、実在しません。

章夫さんは、アンナちゃんと二人暮らし(?)です。だいぶ暖かくなったある日の午後、家の縁側でくつろいでいると、アンナちゃんが、なにかかすかな声に
じっと耳をすませています。
「アンナ、何が聞こえるの?」と聞くと、アンナは、大きな耳を立てながら、じっと中庭のほうをのぞいています。



アンナの目の先は、どうも、1匹もイモムシと小さなバッタのようです。章夫さんたちには、声が小さすぎて聞こえませんが、アンナの耳には、どうも二匹の会話がきこえているようです。どうも、アンナの表情から、こんな会話のようです。



「よう、初めてだな、今日はどこかへ行くんか?」とバッタ君が声をかけました。
「はじめまして、バッタくん。今、下草を食べておなかがいっぱいになったから、休憩しているところだよ。でもあんまり、見晴らしのいい所で寝ていると、
上から、鳥に見つかっちゃうから、そろそろギボウシのに移動しようとしていたところさ。でも、きょうはいいお天気で気持ちがいいからね。もうすこし休憩したかったなあ!」
「そうだな、でも、おなかをすかした鳥たちが、空からみてるぞ。そろそろ隠れたらどうだ?」
「そうするよ、じゃあね」
アンナは、こんな感じだと、章夫さんたちに「翻訳」してくれました。



それから、しばらくして、すこし大きくなったバッタくんが、ギボウシのところに来てみると、イモムシくんは姿がみえず、そこには、大きな「蛹(さなぎ)」がギボウシの枝にかかっていました。
「そうか、もう大きくなって、さなぎに変態したんだ!無事にでてくれば、空を舞うんだ。いいなあ、そんなころは、おれも高くジャンプできるかなあ?」
バッタ君は、そんなことを考えながら、大きな蛹(さなぎ)を見上げていました。



数日後、例の縁側に章夫さんと、敦子さんが座っていると、大きな青いアゲハ蝶が、ひらひらと飛んできました。
「ねえ、みてみて、あそこに、きれいな青いアゲハ蝶がとんでるわ!」と敦子さん。
アゲハ蝶は、急に高度を下げ、そこで、立ち止まったようでした。そこには、大きくなったバッタくんが笑っていました。あたかも、
「すごいな、そらを自由に飛べるんだ、」
「バッタ君も大きくとべるの?花の蜜を探しにいこうか?」
なんて、会話をしているようでした。暖かい春のひととき。




どうでしたか?本院のプランターにも、いろんな花が咲いています。ときどき、イモムシ君がいますが、そっとしてあります。そして、しばらくして、花に水をやっていると、ひらひらと、僕に寄ってくることがあります。あたかも、「ありがとう」といっているように!


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